オーストリア、ザルツブルグの老舗シュナイダー社のローデンコートです。
ラインナップ最小のサイズですが、もともとが羽織るようなAラインの大層なコートなので、それでもM相当かと思います。
日本ではなかなかこのサイズの在庫を見つけられなかったので、ミュンヘンのこれまた老舗のローデンフライで購入しています(別途写真を上げている同店の元箱に入れて送ります。)。
【ローデンクロスについて】
素材はローデンクロスです。
これは伝統的にチロル地方の防寒着に使われた生地で、強く縮絨することにより非常に密で風を通さず、ラノリンを含むため水にも比較的強く、かつ、毛玉もできにくく強度もある大変丈夫な生地となっています。
また、毛足が最後に刈り取られているため、ブラッシングにより美しい艶が出るとともに、触ると大変滑らかです。
縮絨ウールといってもメルトンとはかなり雰囲気が異なり、むしろカシミアのような趣があります。
Sneidersのローデンは長らくウールを主体にアルパカのみ混紡だったのですが、新しい製品ではポリアミドも混紡してアルパカのみよりも耐摩耗性等を高めているようです。
【ローデンハンティングコートの意匠について】
ローデンのコートは伝統的なもので、とりわけ、この製品(Friedrich)のようなハンティングコートのスタイルは、もともと独墺の貴族たちの狩猟用コートとして19世紀後半から広く用いられた形式です。
少しマントを思わせるAラインのシルエット、革でくるんだボタン、背中のインバーテッドプリーツなどが伝統的な意匠ですが、何といっても肩のフローテッドショルダーが大きな特徴です。
私は撫で肩なのでラグランスリーブなどだとしまりのない雰囲気になるのですが、この肩は、珍しい形とはいえ、パッドを入れたような補正感なくかっちり感が出るので気に入っています。
なお、伝統的なローデンハンティングコートでは、脇が縫い付けられず開いていること、コートの内側に手を入れられるスリットが両側面にあることも特徴に挙げられます。
これは狩猟で銃を使う際の利便性を考慮した仕様ですが、日常では不要な機能で保温には不利なので、このコートでは閉じられています。
また、チェスターコートやポロコートなどでは箱型のポケットであることが多いですが、いささか手を入れにくく蓋も邪魔に思うので、伝統的意匠でありながらスラントポケットというのも地味に便利です。
【ライナーについて】
着脱可能なウールのライナーがついています。
裾側以外はジッパーでぐるっと留めるので付けたときの一体感があります。なお、脇裏1箇所はおそらく美観上の理由でボタンどめになっています。
ジッパー部分は比翼のような処理がされ、脱いでもジッパーが見えないようになっています(別途上げている写真参照)。
【その他出品の事情など】
私はもう一着、同じシュナイダースのローデンコートを持っており、伝統的なローデングリーン色のそれを着ているのですが、緑よりチャコールのほうが使いやすいと思い購入したものです。
ただ、同じようなコートを2着持っていても実際にはそれほど出番はなく、服の整理のために未使用のほうを売ることにしました。
ちなみに、もう一着のほうはかれこれ10年ほど着ていますが、毛玉もシワも見当たりません。また、おそらく生地が密だからでしょうが、薄手のカシミヤコートなどでは寒い日でも寒く感じません(しかも、脇が開いていて貫通ポケットもあるモデルなのにです。)。さすが独墺の冬の山地で使われただけのことはあると感心します。
まあ保温力では現代のもこもこダウンには敵わないでしょうが、街なかで着るぶんには防寒面でも十分だと感じています(ただ、ダウンと違ってちょっと重いです。)
色 チャコールグレーです。
サイズ 実測値は次のとおりです。
肩幅 45cm(実寸。フローティングショルダーの先端間の幅は49cm)
身幅(脇下) 56cm
ウエスト Aラインであるため計測なし
袖丈 64.5cm
着丈 110.5cm(襟下から。襟を含めると116cm)