-- 【新書】マトリ　厚労省麻薬取締官　瀬戸晴海著　新潮新書

マトリ厚労省麻薬取締官（新潮新書８４７）瀬戸晴海／著

『マトリ厚労省麻薬取締官』は、実際に麻薬取締官（マトリ）として現場に立った著者・瀬戸晴海が、自らの経験をもとに麻薬取締の実態を描いたノンフィクションです。本書は、日本の薬物問題や捜査の裏側を生々しく語るだけでなく、麻薬取締官という仕事の特殊性とその重要性を多角的に伝えています。

麻薬取締官という職業は、警察や検察と比べて一般的にはあまり知られていません。しかし、彼らは日本国内での薬物犯罪の防止において、最前線で戦うスペシャリストです。本書では、緻密な捜査手法や、対象者の心理を読むプロセス、時には命を懸けた危険な現場の状況がリアルに描かれています。また、取締官たちが直面する葛藤やプレッシャーについても言及されており、彼らの仕事の重みや使命感が読者に伝わってきます。

特に印象的なのは、薬物が社会に及ぼす深刻な影響についての著者の視点です。薬物依存者が抱える問題や、違法薬物がどのように社会全体を蝕むのかについて、具体例を挙げながら丁寧に説明しています。これにより、薬物問題が単なる犯罪の話にとどまらず、社会全体の課題であることを強調しています。

また、著者は自身の経験談だけでなく、歴史的背景や国際的な薬物対策の視点も取り入れています。これにより、読者は薬物取締の現状をより広い視野で理解することができます。一方で、時折見られる著者の個人的な意見や感情が、専門的な話題に温かみを加え、読みやすい内容となっています。

『マトリ厚労省麻薬取締官』は、薬物問題やその取締に関心のある読者にとって必読の一冊です。スリリングな捜査の裏側だけでなく、薬物問題の社会的影響や取締の現場に携わる人々の苦労と使命感を深く知ることができます。新書という形態ながら内容は濃く、薬物犯罪が身近で現実的な課題であることを痛感させられる作品です。読み物としても教養書としても優れた一冊で、多くの人におすすめしたい作品です。

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