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発売日： 2021/03/10
製作年： 1999年
収録時間： 本編104分+特典映像32分
出演者： 役所広司 池内博之 大杉漣
監督： 黒沢清
字幕： ----
音声： ----
シリーズ： ----
メーカー： キングレコード
ジャンル： サスペンス ホラー
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全体状態評価「B」・経年劣化「小」・カバーイタミ「小」・スリキズ「小」・レンタル落ち
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森全体を破壊してしまうといわれる1本の木「カリスマ」。人質と犯人の両者を助けようとして、どちらも助けられなかった刑事、藪池はいつしか「カリスマ」をめぐる争いに巻き込まれていく…。 刑事・藪池は、犯人と人質を両方生かそうとして両方死なせてしまう。心に深い傷を負った藪池は、心の傷を癒そうとふらりと入った森で一本の木に出会う。それは、根から分泌する毒素によって周りの木々をすべて枯らしてしまう不思議な木“カリスマ”だった。周辺ではそのカリスマを巡り、森全体のために伐採を主張する者と、カリスマを守ろうとする者とが激しい闘争を繰り広げていた。「ＣＵＲＥ」の黒沢清監督が真に自由に生きることの意味を問うた人間ドラマ。 黒沢清監督がサンダンス・インスティテュートのスカラシップを獲得した作品。役所広司、大杉漣、洞口依子といった黒沢映画おなじみの俳優陣に加え、木をかたくなに守り続ける青年役の池内博之のナイーブな演技がいい。「特別な木も森全体もない。あっちこっちに平凡な木が1本ずつ生えている。それだけだ」と最後につぶやく藪池の表情には、どこかすがすがしささえ感じられる。生きることも死ぬこともあるがままでいいのだ。「自然を美しいものとか、怖いものとみなす、人間と自然との関係性から脱して、木が木であることの“神秘的な事実”に立ち戻りたい」という監督の試みは完璧に成功している。 【好きだわこれ】 「一対多」の構図を、最初の立てこもり殺人から拡大解釈的に見せ続けていて、巨大カリスマのキノコ雲オマージュもあって戦争の難題になぞらえるテーマが作品全体に敷かれている。 その上を感情の取りつく島のないような主人公が、一本の木の話を軸に、強力な思想を持ったそれぞれの人物の中を狂言回し的に縫い歩き、ただの寓意的カリスマを構築、破壊することによって「ただ一本一本が生きてるだけ」という帰結にたどり着く話 お話として常にどこか浮いたような、収まりの悪い、どこにも視点が定まらないような黒沢清お得意の不安感の見せ方がありつつ、またお得意の後ろ盾の何もないような危なっかしいユーモアもふんだんに盛り込まれてて、どんな場面でも気の抜けないのがワクワクする 生命の尊厳や善悪の垣根がそれぞれ欠けている人物がそれぞれなにかをしでかすのが黒沢清の映画に期待してるところなので、ただの日常風景だけでも何か起こりそうで楽しい。 登場人物がいちいち良くて、山奥の姉妹の、なんとなくエロさすら感じさせる清潔で毒のある空気感とか、旧日本人めいた坊主で刀持ちで病気の家族を抱えた青年の、守るものを一つ失った瞬間に全てのやる気を失う感じとか、お金で人をこき使う役人気質の奴らと、お金だけで動く多国籍軍みたいな無言の男たち(最後は雇い主をハンマーで私刑にする)の機械的な感じとか、カラッとして冷えた人物描写は健在。 「どちらも立たず」のなかで、「どちらが死んでもあるがままに」と気づく藪池。矛盾を放置して絶滅するならそれもあり でも、『世界の法則を回復』するには一つだけ方法がある。それが最後のシーンに繋がる 。 【カリスマ"と呼ばれる樹木を巡るちょっとおかしな人々の群像劇】 黒沢清による、静かな戦慄の世界をひたすら堪能する作品。『CURE』で人知を越えた"何か"になった役所広司が、その後精神世界をさまよっているようにもみえて面白い。役所の役柄が『CURE』の高部刑事とほぼ一致していることもあり、どうしても両作品の世界がつながってる感じがする。人が普通じゃなくなる日常を描いたのが『CURE』だとすれば、『カリスマ』はその果てを描いていることになるのか？いろいろな解釈ができそうで楽しい。 黒沢清を知らない人がいきなりこれ観たらたぶんキツいでしょうな登場人物が基本的に何考えてるか分からないところや、奇妙な演出の数々、何より全体的に哲学を聴かされてるこの感じは抵抗不可避かと。黒沢ファンにとってはそこが心地よく感じてしまうのです。『CURE』→『カリスマ』の順で観るのがオススメです。 あと、"黒沢清×木"の組み合わせで忘れてはならないのが、「学校の怪談G」の一編「木霊」です。こちらはストレートに怖いホラーとなっております。登場人物がおかしい人たちという点は『カリスマ』と変わりませんが。 【法則ってなに？】 一本の木を守るか、森全体を守るか。 二者択一でなくてもいい。 どちらも生きたいなら両方生きればいい。 殺し合うならそれでもいい。 つまりなすがまま。 最初のカリスマが失われるが、枯れ木をカリスマと呼ぶとすぐさまそれを欲するものが現れる。 つまりカリスマなんか幻想だというわけ。 そのくせ、吹き飛ばしたカリスマの中に新たな芽を見つける。 消し去ろうとしてもムダ。次々現れるよということ。 オヤジ、金、若者、毒、崩壊… ラストは未曾有の大反乱といったとこか。 これは次の時代を担うべき若者へのメッセージに思えてならない。 毒をもて。 体制に飼いならされるな。 抗ってでも新しい世界を創れと。 【ひょっとして、車に火をつけたの君なの？】 映画冒頭から既に“現世”は兎角曖昧で、主人公：薮池が横たわるベンチが置かれた廊下の定まらなさは、そこが果たして本当に警察署であるのか、はたまた病院であるのかすら定かで無い。 気がつけば境界を越えて森の中にいた薮池は、しかし慌てた様子もなく、秩序や思想に対して一見透明であるかのような態度で接しはじめる。薮池が森で出会うのは、今にも枯れそうな矮樹“カリスマ”を守ろうとする男：桐山、各々の理由で“カリスマ”を排除したい中曽根、神保。 桐山に手を貸して“カリスマ”保護を手伝っている風の薮池は、植物学者の神保にも、桐山の隙を狙って“カリスマ”排除を目論む中曽根にも等しく接し、確たる態度を示そうとはしない。薮池は何千年後までも木が生き残ることになるかもしれないと夢見るように口にしつつ、それが燃やされても桐山のように動揺することもない。 はじめは、療養の為に“自然”に囲まれた森へとやってきた主人公が、森の中が決してユートピアではなく、果てしない闘争の場であることを住人たちから知らされていく話であるかのように見えるものの、その過程は壊れた主人公を癒やすことなく、寧ろより透明な存在へと昇華させていく過程であった。森を滅ぼしても生きようとする“カリスマ”、森を守るために“カリスマ”を排除しようとする役人たち、全てを更地にしてから森を再生させようと、水に毒を盛って“カリスマ”を燃やす植物学者、その誰にも賛成も反対もすることなく「そういうものなんじゃないかな」と言って薮池が肯定しているのは、誰の立場でも思想でもなく、そういった世界の在り方そのものである。ひとりの住人として森へ入ってきた薮池は、やがて枯木を新たな“カリスマ”に認定し、猫島も神保も新たな木に囚われてしまう。普通でいい、特別でなくていいと言う薮池は、普通を捨て、世界と普遍に漸近していった。 いつのまにか、最初からか、カリスマは木から薮池に乗り移り、やがて森を去っていく。誰もが森の外への道を知っていると言っていた。だが、実際に出られるのは帽子を捨てた黒服たちと薮池だけ。森の住人の世界に外はなく、外への道は一千万提示したところで開かれるものでもない。だからカリスマから解き放たれて自由になったとしても、桐山は森からでることはできないのだ。 「自由は一種の病気だぞ。本当に健康な人間が求めるのは服従だ」 【勝手に思い出したこと】 一口に”開かれた映画”といってもそうそううまくいかないものでしょうけど、この作品は自分には開かれていたようです。 多少ネタバレを含みつつ”個人的感想”を書いてみます。 映画は、夜空の下で焼けている街を主人公が遠望するシーンで終演するが、そのシーンが70年前の終戦の光景と連続しているのではと感じたのは、若い頃読んだ坂口安吾のファルスを思い出したから。透徹したリアリストである彼は、可愛い赤ずきんがオオカミにむしゃむしゃ食われてしまうような荒唐無稽に文学の故郷を見ていた。そして戦後になると、焼け跡に広がる青空の下で、淪落の底に人々が堕ち切ることを夢見ながら、清々しいほどに絶望していた。救いがないことを救いだとした彼の言葉が、映画の中で何度も語られた『世界の法則を正す』という言葉の無意味さのなかで幾たびも反響した。そもそもながら「人は堕ち切れるほど強くはない」のだから、『世界の法則を正す』というのは現代の宿痾ではなく、人類史において過去も未来も同じことなのだろう。そして人は何かをカリスマとして、”天は自ら助くものを助く”るべく生きざるを得ぬのだろう。いやはや本当に救われない。 【時間返して！】 全く意味分からん！時間返して！ エンド・ロールに監督：黒沢清の文字が！ やはり俺には黒沢清監督作品の良さが分からん！ バカと言われようとも無理なものは無理！ 何故、この監督が海外で評価されているのか、 俺には理解できません。 【世界の法則とは？】 たとえば夜中なのにうるさく騒ぐ人が同じ団地に住んでいて、その人に静かにしてくださいと頼んでもどうにもならないとき。昔だったら夜遅くに騒ぐ人には祟りがあるとか災いが起こる、それは当人だけではなく村全体にまで及ぶとか言って、その人を村八分にしたり、あるいは罰を与えたのだと思う。そういうときの祟りや災いを正当化するための作り話が世界の法則ではないのだろうか。昔の人が王様のいうことを聞いたのもそういう原理だと思う。あの木にそれぞれの人間がそれぞれの妄想というか真理を見るのも、何かこの世界に欠けているものや自分が望んでいるものをその木に意味を見出して物語化してしまうからだろう。だからここからネタバレになるが、ただの木が死んだだけで世界の終わりが始まる。ということを描いた映画だと思うのだが間違っているだろうか。 事実ある時ただのおばさんを魔女だと思えば、それがあっという間に広がって魔女狩りが始まるときがあるし、そういう世界の法則は一本の木が特別だと思える想像力があるからなのだろうか、そういうことを暗示する映画だと思うのだが簡単には感想の言えない作品だった。 【ネタバレは、ありまぁす！】 難しい映画ですね。 樹を立てれば森が立たない。森を立てれば樹が立たない。 昔からある樹を守ろうとする人がいて、いや一本の樹を殺して森を生かせという人がいて 他人が大事そうにしているものに興味本位でちょっかい出す人がいて 一本の樹をぐるぐる廻るうちに意見の不一致がやがて血を流すまでにエスカレートしてゆく。 「もうひとつのカリスマ」は一瞬キノコ雲のように描かれていましたし、公開時のポスター(だったかな？)には戦闘機が描かれていましたし 作品の根底には社会が戦争を生むまで、というようなテーマがあるように感じました。 都会という社会から田舎という自然へ逃げてきたはずの主人公は、結局そこにも存在した同じような社会に巻き込まれてしまう。 最終的に主人公は社会そのものに対して諦観を示したように見えました。すると、ラストシーンの電話の台詞、そして街の遠景は 右派の戦争、左派の革命に対する、無秩序主義のテロルだったのではないでしょうか。 【カッコいいぞ黒沢！】 これまでの黒沢作品よりずいぶん抽象的な作風だ。しかも監督自身が言っているように、作品が一切のジャンルに属さない。ホラーになったり、サスペンスになったり、と思いきやアクションがあって、それでいてコメディみたいな。ナンなんだ！？と嘆きながらも、その異様な世界観に引き込まれていく。 不気味で荘厳と思いきや、俗的で馬鹿げたやり取りが出てきたり、ワライダケむしゃむしゃ喰らって、ケラケラしたかと思ったら、半ば白骨化した死体が吊り下がってたり、驚くほど生々しいハンマー殺人がスローで延々行われたり。少しもこちらの想定内に収まらない演出だ。しかも登場人物たちのバックグラウンドがほとんど何も分からないまま物語は終始する。そもそもどう物語が始まって、終わっていったのかが、曖昧である。 一本の樹木を巡って、それぞれの人間たちがそれぞれの意見をぶつけ合い、間に挟まれた役所はどう現実を捉えたらいいのかと呆然とする。カリスマはマイペースに森を破壊し、逆に森はカリスマに歩み寄る。なんか今日の世界政治や宗教戦争みたい。一つ（もしくは一人）のカリスマが資源を略奪し続けているにも関わらず、人はそこに擦り寄っていく。そしてそれを囲む人間たちが、それぞれのファクターを抱えてカリスマや森を議論する。 法則を回復せよ。役所に与えられたテーマだが、あまりにも広大かつ果てしない難題だ。そして役所の選択は、全てを生かし、全てを殺す、あるがままに。そして「CURE」を彷彿させる役所が神格化してしまったかのような、謎のラスト。う～ん...、悩ましげ。しかし「アカルイミライ」も含めて、黒沢監督ってのは自然界をテーマにするね、といって単純にエコロジストというようなわけでもなく、そもそも自然界は人間界を考えるキッカケになっているようだ。 どうでもいいけど、役所の着てたコートよこせっ！ 【逆行する役所広司】 人間が歴史をかけて形成してきた社会のしがらみ、法則から脱却し、ある種の自由を手に入れたアナーキストと言えるかもしれない。 彼の概念のうちではないはずだが。 カリスマという名の木。まさにマクガフィン的機能を果たし、人間が与えた虚構的意味でしかない価値が人間を動かし、また別のものに転用されることができる。 森の住人達でさえ、自然法則ではなく、人間が作り出した「社会的構成概念」に囚われている。 登場人物たちによる異常な行動のオンパレードのように映るが、DNAに刻み込まれた協力や対立は、人間の本能といってもいいのではないんでしょうか。 唯一、人間社会という意味において、まともを逸脱し、自然という自由を手に入れた男。彼は動物となったのだ。 黒沢清らしいというか、その場に一本生える木の奇妙さからして、シュールな雰囲気が全編通じて漂う。ショット一つ一つをとっても絵的すぎて不自然でいて、怪しげ。まさに、怪作。 |
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