
Sam Cooke One Night Stand: Live At The Harlem Square Club 1963 サム・クック
中古盤
輸入盤
デジパック仕様
臨場感たっぷりなんてもんじゃない。
MCの紹介を受けて登場してからは、怒涛の、あっという間の38分。
キング・カーティスと自身の混成バックバンドの
粗くも、疾走する演奏を巧みに仕切りつつ
黒人で埋め尽くされたハーレムスクエアという
クラブ会場を全て、熱狂させるその熱量、熱唱。
正に圧巻であり、つい何度も通して聴きたくなる
ライブの歴史的名盤。
サム・クックという、その名は知れども
オーティス・レディングが師と仰ぐわりに
やけに大人しいスタンダード、オールディーズの
曲ばかりの御大シンガーと思ってたら、大間違い。
スタジオ盤で聴ける、品行方正で、お行儀のいいサム・クックは此処にいない。
割れまくったダミ声ながら、ガッタガッタとシャウトしまくり、曲中も笑いながら、客を煽り、
一緒に歌い、跳ねまくる。
こんなに激しく、エモーショナルでありながら、
けして暑苦しくなく、聴く者すべての心をごっそり持っていく不世出のシンガーの怖ろしいまでの唯一残された名演が、この一枚で堪能出来る。
冒頭から、飛ばしまくりで、鳥肌が立ちっぱなしだが、
6曲目に演奏される代表曲”Twistin' The Night Away”のイントロからは失禁もの。
また自身のポップスシンガーとしてのデビュー曲”You send me”の節を変えながら、前フリしつつ、突入する8曲目”Bring it on home to me”で
呆然自失にならないほうがおかしい。
頭がグラグラして、カッコ良すぎて、なんか切なくて、泣きたくなってくる。
元々ゴスペルの名手とはいえ、キレた宣教師が導く、グルーヴを越えたヴァイブ感が半端ない。
当初1963年、サム・クックが白人マーケットにて
市場を拡げていた時期に、ワンナイトスタンド(一晩限り)として、ブチかました
歴史的な瞬間を真空パックした録音。
”当時売り出していたソフトで端正なイメージとの乖離がある”という、つまり”黒過ぎる”という
皮肉な理由で、死後もお蔵入りしていた作品。
でも時代を考えれば、賢明だったとしか、言いようがない。
差別が横行し、黒人というだけで人権が脅かされていた不幸な時代に、彼がメインストリームで
道を切り開いたからこそ、
後発のオーティスや様々な偉大なソウルミュージックが、この世に生まれたと言っても過言ではない。
(実際、半世紀以上経った今でも差別自体は
根本的には何ら変わっていないどころか、其れを表出することを良しとする、ここ最近の米国の
風潮、延いては白人至上主義を
臆面もなく晒すトップとごく一部であるが愚民のマヌケ面は嘆かわしい限りだが)
しっかり、このあと抑制を効かせつつ、
白人向け仕様でありながら、公民権運動に繋がる曲を忍ばせたサパークラブでのライブ盤を、本作の代わりと言わんばかり、
発表しているクレバーな彼である。
上記の”素晴らし過ぎる”という理由で、発表が見送られた本作であるが、けしてスタッフサイドの要請でなく、実は、この煽動するパワーは
危険視されると判断したサム自身がひょっとして
未発表を言い出したのではないか。
そんなことすら考えてしまうほど、ダイナミックで、ライブの本質である会場観客との
コールアンドレスポンスの一体感、そして有無を言わせない圧倒的なパフォーマンスが詰まった
至宝の一枚である。
”ソウルはちょっと…”とかいう輩にも、お薦めしたい。
ちゃんと心と、ホンモノが見極められる耳さえあれば、
必ず届くはず。
ジャンルを超えたマストバイのマスターピース。