主な受賞：芸術選奨文部科学大臣賞　総理大臣賞　第29回安井賞

遠藤彰子（えんどうあきこ）は、現代日本を代表する洋画家の一人で、その圧倒的なスケール感と独自の画風で知られています。1947年、東京都に生まれ、1972年頃から画家として本格的に活動を開始しました。彼女の代表作である「楽園」シリーズは、自然豊かな相模原市での生活からインスピレーションを得て誕生しました。また、1970年代後半から制作を始めた「街」シリーズは、彼女の名を広く知らしめるきっかけとなり、1986年にはこのシリーズの集大成ともいえる《遠い日》で第29回安井賞を受賞し、画家としての評価を確固たるものとしました。

遠藤彰子「佳日」油彩 4号 共シール
遠藤彰子の代表作のひとつである「佳日」は、家族の日常の温かさとその中に潜む幸福感を描いた作品です。タイトルにある「佳日」という言葉は、「美しく良い一日」を意味し、この作品を通じて、日常にある何気ない瞬間の尊さが巧みに表現されています。画面には、窓越しに広がる都市の風景を背景に、家族がテーブルを囲む様子が描かれています。父親が赤ちゃんを抱き、母親が物思いにふける一方、子どもたちはそれぞれ絵を描いたり考え事をしたりと、個々の時間を過ごしています。テーブルには果物が盛られた大皿やスケッチブックが置かれ、日常の豊かさと創造性が感じられます。また、テーブルの傍で丸くなって眠る猫たちは、家庭の平和と安心感を象徴しています。

遠藤彰子の特徴である柔らかな筆致と豊かな色彩は、この作品にも存分に活かされています。人物や動物の描写には生命感が宿り、背景の都市風景と対比的に描かれることで、家庭という空間の温かさがより一層引き立てられています。鑑賞者は、この作品を通じて日常の何気ないひとときがいかに特別で大切であるかを感じることができます。「佳日」は、遠藤彰子が追求する「日常の中にある楽園」のテーマを象徴する作品であり、見る者に日常の美しさを再発見させる力を持っています。この絵画が、見る人々の心に安らぎと幸福を届ける一枚であることは間違いありません。