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送別歌　　宝田明

朝鮮生まれで満州育ち。戦後の引き揚げで初めて土を踏んだ故国での異邦人としての想い――。大陸で育まれた宝田明のコスモポリタンとしての気質は演劇の世界で開花された。
反核のシンボル“ゴジラ"の盟友として未来に託すメッセージとは…。
満州からの過酷な引き揚げの旅を詠んだ「送別歌」に込めた、コスモポリタンとしての流儀を語る。

「送別歌」は第二次世界大戦終結後、少年だった私が引揚船に乗せられて満州から日本へ向かう、その日の心境を詠よ んだ漢詩です。「送別歌」に込めたのは、別れの悲しみを歌に託して将来の再会を願う気持ちです。たった一度、一瞬の出会いが人生を左右することがあります。人も物も出来事も、一期一会を大切にすれば新しい発見にも恵まれます。(本文抜粋)

時代の要請に応え、国民の心情を代弁する作品に関わった私は、ゴジラという名実ともに巨大な「同級生」と役者人生を共にする宿命を背負ってスタートしたともいえるかもしれません。 『ゴジラ』で訴えた核をめぐる問題は、六十五年経った今でも解決されていません。今こそ、私たちにとって本当に大切にしなくてはならないものは何かを問いかけ、それを訴え、考えるきっかけに少しでも私がなれるのなら……と思い、悲惨な時代の目撃者として私は自分の戦争体験を語るようになったのです。(本文抜粋)

平和は一国だけではつくれません。満州でコスモポリタンに育ち、戦後、日本に入ってきた外国映画によって異文化を知った私は、それぞれの民族には文化があり、共存し、助け合うことで平和はつくることができると肌で感じています。(本文抜粋)

・銀幕スターとしての輝かしい交遊録
ゴジラ/本多猪四郎/司葉子/森繁久彌/三船敏郎/成瀬巳喜男/高峰秀子/黒澤明/志村喬/藤本眞澄/菊田一夫/千葉泰樹/尤敏/石原慎太郎/川島雄三/伊丹十三/江利チエミ/日野原重明ほか


「大陸」とあだ名されたコスモポリタンの流儀。“ゴジラ”の同級生として俳優人生を歩んできた私だから語れることがある。銀幕スターとしての輝かしい交遊録。

目次
プロローグ　送別歌
第１幕　大陸育ちのコスモポリタン
第２幕　消えない弾痕
第３幕　お汁粉の月
第４幕　異邦人としての旅路
第５幕　“ゴジラ”の生き証人
第６幕　人生はちょっぴり不幸な方がいい
第７幕　日本映画黄金期の光と陰
第８幕　スポットライトを浴びて
第９幕　コスモポリタンとしての使命
エピローグ　私の願い
カーテンコール　甘えついでにもう一言

登場する方々
劇団四季　福田赳夫　志村喬　ゴジラ　湯川秀樹
日野原重明　黒岩祐治　柳家金語楼　三船敏郎
マザーテレサ　織田信長　豊臣秀吉　徳川家康
レッドバトラー　スカーレット　トムジョーンズ
ハーヴィーシュミット　岡崎友紀　上條恒彦
沢木順　江利チエミ　菊田一夫　雪村いづみ
美空ひばり　黒澤明　森繁久彌　香川京子
山本嘉次郎　司葉子　鶴田浩二　岡本喜八
伊丹十三　宮本信子　山口組　石原慎太郎
石原裕次郎　川島雄三　フランキー堺　松山善三
成瀬巳喜男　淀川長治　小森和子　高峰秀子
小津安二郎　林芙美子　レオナルドダヴィンチ
池辺良　藤木悠　岡田真澄　伊福部昭　円谷英二
上原謙　田中絹代　ジャンギャバン　天本英世
ジョンウェイン　高島忠夫　多々良純　伊丹万作
古今亭志ん朝　伊東四朗　加山雄三　山口淑子
李香蘭　木下恵介　尾上九朗右衛門　原節子
岡田茉莉子　青山京子　久保明ほか多数

レビューより
宝田さんの「満洲時代」の所で、絶句する思いでした。ソ連兵による蛮行、宝田さん自身がソ連兵に理由不明でダムダム弾で撃たれ、生死の境
を彷徨った事。ソ連占領下の満洲での悲惨な出来事。軽い気持ちで読み始めた自分が恥ずかしくなる思いでした。俳優人生の中でのご自身の姿勢や思いは勿論、平和とは何か、を重心に置いておられ、事前の期待とは全く違う感動を覚えました。
興味のある方は勿論、一人でも多くの方に是非、読んで頂きたい書籍です。



教科書、授業では絶対教えてくれない第二次世界大戦前後の日本の庶民の私生活の実情がよくわかりました。表紙の柔らかさ、大きさに読みやすさがあり、ついつい寝床で読みふけってしまいました。三船さん、森さんはTVドラマで見る機会が多いですが、宝田さんは劇場主体の出演で演技を見る機会がない状況でしたが、本誌でよく分かりました。満州国の実態など授業で聞いた覚えもありませんが、陸軍の酷さがよくわかりました。授業できる内容ではなかった、と云う事を納得できました。ゴジラ制作の理由も今まで全く知らず。更新された映画等を見るだけでした。このような背景からの作品とは全く知らずにいました。いろんな意味で還暦超えた人間の勉強になる作品でした。