一世を風靡した9R-59の上位機種。
基本回路構成は9Rシリーズ同様、高周波一段、中間周波二段のシングルスーパーですが、JR-60が上位機種たる所以は
クリスタルコンバータの内蔵によって、ダブルスーパー化された50MHz帯を有することです。
受信モードもCW, AM, SSB に加えてFMにも対応したオールモードとなっています。
また、選択度向上の為に装備されたQマルチプライヤの運用面の改善がなされています。
9R-59では、QマルチがBFO兼用のため、両方の機能を使うことができませんが、
JR-60ではBFOとQマルチを独立にしているため、必要な場面で同時に働かせることが出来ます。
その他、クリスタルマーカー基板の内蔵、安定化電源回路が付属されており、
やれることは皆やって、このクラスの受信機で最高級の内容を目指したトリオ開発陣の意気込みが伝わってまいります。
本機のレストア状況を以下に示します。
・ 不動の原因は、送信機接続用リモート端子の開放でした。この端子をシャシー内部でシャントするとB電圧が供給され、
動作しました。 背面のリモート端子は、一見ACコンセントのように見えても、これには直流200Vが来てますので、
他機器のACプラグを繋がないでください。(塞いでおきます)
・ 感度が極めて悪い原因は、RF管を6BZ6に変更したにもかかわらず、配線が6BA6のままという手痛いミスでした。
せっかくの高gm管が動作しないばかりか、これでは5球スーパー以下です。
・ Sメーターのブリッジ回路を形成する抵抗の間違い。470Ωが入っていたのを100Ωに変更し、Sメーターが作動しました。
・ AF-GAIN 500kΩ(A) ボリュームの残留抵抗が11kΩあって音が絞れません、交換しました。
・ RF-GAIN 10kΩ(C) ボリュームの残留抵抗は11Ωでした。これならほぼ最大感度が出せます。
・ FMのフロントエンドは6BL8より高周波特性の良い6U8に変更されています。
・ コイルパックKR-430の付属マイカコンデンサは全て規定値でした。
・ マーカー用クリスタルは欠品です。必要ならご自身で入手ください。
・ 電源フィルターのケミコン40μF×2は健全でしたが、念のために交換しました。同じような回路でも、9Rシリーズより
ハムが少ない印象を受けます。
・ 局部発振管6AQ8カソードに周波数カウンターを繋いでバンド調整をしましたが、この際に取り付けた
リードワイヤー(シールド線)をシャシー背面に出しています。カウンター付加の際に便利です。
・ 外付けのスピーカーBOXを製作しました。8Ω1Wで余裕があります。
夕刻から試聴しておりますと、宵が更けるにつれて入感する局がどんどん増える様子に、時の経つのを忘れてしまいます。
本機は初段RFを標準の6BA6から、2倍以上ハイゲインの6BZ6に換装してますので、ハイバンドも快適です。
さて、本機の売りのQマルチプライヤがどのような物なのか、現状正しく動作しているのか。この評価は難しいところです。
私とて、Qマルチプライヤを語るほどの資格・経験は持ち合わせません。ただ、ノイズに埋もれている放送を聴きながら、Qマルチの
2個のノブを操作しておりますと、ノイズが消えて、音声が浮き出すポイントが確かにある。
ああっ、 これがQマルチなのか。放送波で使うとこんな感じなのか、9R59では何をやっているのかすら解らなかったな。と
もう独りで納得するしかありません。JR-60のQマルチプライヤ、 皆さまも是非ご体験ください。
以上、色々ブラッシュアップしてみたJR-60、ぜひご所有くださいませ。
通信機型受信機を求める方には釈迦に説法とは存じますが、
受信はご居住の地域、建物の状況によって大きく左右されます。コンクリート建造物、マンションにあっては特に
アンテナを工夫することが大事ですのでご留意くださいませ。
元来、10~15m長、10m高のアンテナにアース設置がスタンダードです。
整備には念を入れましたが、構成部品の多くは60年以上前の物です。コンディションの変化がありうる点もご理解くださいますよう
お願い申し上げます。