FUJINON 55mm F2.2 美しいバブルぼけとサークルゴースト発生するオールドレンズ 外装部品のひび割れ皆無の美品【分解整備・実写確認済】

FUJINON 55mm F2.2 美しいバブルぼけとサークルゴースト発生するオールドレンズ 外装部品のひび割れ皆無の美品【分解整備・実写確認済】 收藏

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※分解整備・実写確認済レンズを準備ができ次第追加出品中です。よろしければ出品リストからご覧ください。
出品リスト

○出品物は以下の3点です。
・FUJINON 55mm F2.2
・フロントキャップ(ノーブランド・新品)
・リアキャップ(ノーブランド・新品)

・絞り開放時に美しいバブルぼけが描写ができることで有名なレンズです。このレンズは画面の外周付近まで真円に近く繊細な輪郭をもつきれいなバブルぼけができる特徴があります。
・出品個体はバブルぼけ内部にレンズ内のチリやレンズの劣化に伴う影が全く見られず上質なバブルぼけが撮影できます。メインの商品写真にバブルぼけの拡大写真を入れてありますのでご確認ください。もしも、レンズ内に目立つチリやレンズの劣化部分などあるとすべてのバブルぼけ内にそれらが影として投影され,汚れたらシャボン玉状に写ります。後述のリンク先内にある34.jpgがその実写例です。
・今回出品した個体の特徴はサークルゴーストが発生することです。同型のレンズには同様のものが時々見かけられますが、その割合は少なめです。
・同型のレンズは多くの個体で距離環の先端等にひび割れが発生しており、ひび割れが進行したものではフォーカスリングの先端部が欠損しています。また、指標環のねじ穴部分でひび割れや断裂が発生しているものも多く見られます。出品した個体の距離環は内部構造がひび割れを発生するタイプのものと異なるため、ひび割れが全くありません。指標環にもひび割れ等は発生していません。
・このレンズはM42マウントですが、マウントアダプターを選択する際には注意が必要です。詳細は商品説明の後段に記述しています。
・フォーカスリングの操作感を改善するためにCOSINAがヘリコイドラッピングと呼んでいる方法を参考にして同等の作業手順でヘリコイドの溝を研磨しました。この方法の詳細については、商品説明の末尾に説明を掲載しています。

※参考までに商品写真に,この個体による実写例を入れましたのでご確認ください。実写例はSONY α7RⅡによるもので、すべてフルサイズ画像です。これらを含めた高解像度画像の実写例を以下のリンク先で確認できます。任意の画像を選択後「オリジナルを表示」または「ダウンロード」にすると,4240万画素の画像を部分拡大して見ることができます。また,ここでは商品の詳細画像も確認できます。

高解像度実写例と商品の画像

同型別個体による作例写真

【外観及びレンズの状態】
・背後から強い光で照らすと後玉表面にかすかな劣化部分が見られますが、かなり薄いものでバブルぼけの質も含め、実写結果への影響は感じられません。
・レンズ全体の透明度は大変良好で,商品写真中に入れた実写例のようにクリアな撮影結果が得られています。
・フォーカスリングはよく見られる先端部にひび割れが発生するものとは内部構造が異なり、同様のひび割れは発生しないタイプです。
・文字やマークも鮮明で見やすく比較的きれいな部類だと思います。
・レンズの外観はかなりきれいな部類だと思います。前述のリンク先にこのレンズの高解像度画像がありますのでご確認ください。

【可動部の状態】
・フォーカスリングは全周にわたって一定の手応えでスムーズに回転します。逆転時の遊びはなくピント合わせを正確にできます。ヘリコイドにラップ研磨処理を行ったため、回転時に指先にざらつきなどの違和感が伝わってくることはありません。
・絞り羽根に油の付着はなくきれいです。
・絞り羽根の動作はFUJICAST-801ボディに取り付けて確認しましたが,シャッターに連動して迅速に開閉しました。
・絞りリングはクリック感が良く、軽い力でスムーズに回転します。
・フォーカスリングおよび絞りリングの操作感は、多くの方に良好だと感じていただける状態に整備できていると思います。

【このレンズの特徴等】
・美しい『バブルぼけ』描写ができる比較的ローコストなレンズです。バブルぼけレンズは海外製の高価なものが数種類知られていますが,FUJINON 55mm F2.2はそれらと比較すると安価に入手できるにもかかわらず,バブルボケの質は勝るとも劣らないはど良質なものだと感じます。
・商品写真中のバブルボケ写真を見ると、単なる玉ぼけではなく,玉ぼけの周囲に円形の繊細な輪郭ができシャボン玉のようにも見えます。それらの輪郭が重なり合うような描写になることがお分かりいただけると思います。特にこのレンズのバブルぼけは輪郭が細く明瞭で、この輪郭の重なり合いが大変きれいです。
・背景にある点光源がバブルぼけになります。
・このレンズによるバブルぼけは,画面の周辺付近でもほぼ円形を保っている点が特徴です。他のレンズでは円形のぼけが画面の周辺に行けば行くほど形が楕円形にひしゃげていくものがあります。

【分解整備の内容】
・内部のレンズ面に付着していたチリなどを可能な限り清掃しました。完全に取り除くことはできていませんが,クリアな状態になったと思います。商品写真中のレンズ背後からライトで照らした画像をご確認ください。
・個々の部品に分解した際に水洗可能な部品はすべて洗剤による洗浄を行いました。表面に付着した汚れや不要な油分を除去しました。
・絞り環、指標環の文字やマークの色が退色していましたのでオリジナル色の近似色に調整した油性ペイントで補修しました。これらのペイントは文字やマークの刻印内に入れてあり水濡れにも耐えるため,簡単には落ちてしまうことはありません。
・フォーカスリングのヘリコイドに使用されていた古く汚れたグリスを除去し、ヘリコイドの溝の中までラップ研磨と呼ばれる方法で磨き上げ,溝の奥にたまった細かな汚れを取り除くとともに表面をより平滑にしました。その後,粘度が適した新しいグリスを隙間なく充填しました。
・FUJICAST-801にマグニファイアを取り付けて確認しながら無限遠マークの中心で無限遠にピントが合うように調整しました。フィルムカメラで星や遠景の写真を撮影する場合に、フォーカスリングを∞位置に合わせただけでピントが合う状態になっています。ミラーレス一眼にマウントアダプターを介して取り付けた場合は、そのマウントアダプターの設計や工作精度によって無限遠位置が異なりますが、オーバーインフの(無限遠マークのわずかに手前で無限遠にピントが合う)ものが多いと思います。中国製のものを多数入手して確認しましたが、中には極端なオーバーインフのものもありました。

【適合するマウントアダプターについて】
 私はこのレンズをM42マウント用のマウントアダプターを使用してミラーレス一眼に取り付けています。この場合、マウントアダプターはFUJINONのM42マウントに対応するものを選んで使用する必要があります。FUJINONのM42マウントレンズには絞り環からマウント部に小さな突起が出ています。そのために、この突起と干渉しない構造になったM42マウント用のアダプターが必要です。私が使用しているのはK&F ConceptのM42マウント用アダプターです。このアダプターはマウント面が2段構造で外周部が低くなっているため絞り環の突起が干渉しません。また、このマウントアダプターはピン押しタイプにもなっています。ピン押しタイプ以外では絞りが開放のままになってしまします。前述の実写例を置いたリンク先に関連画像を置きました。(28.jpg)
 フィルムカメラで使用する場合はFUJICAだけではなくPENTAX SP等のM42マウントカメラでも取り付け可能です。

☆お願い☆
・オークションの終了後48時間以内に支払いを完了していただける方のみの入札をお願い致します。
・この期限が過ぎた場合は補欠落札者に連絡を取る,または,再出品のため「落札者都合にて削除」させていただきます。
・このレンズは,入手した時点で既に中古品でした。新品と同等の品質を希望される方にはご満足いただける状態とは言えません。また分解整備についても個人の趣味のレベルで行っているものでプロによるものではありません。入札される場合はそのことをご了承くださいますようお願い申し上げます。商品写真と実写例をじっくりご確認いただいた上で入札をご検討ください。

【送料】
・「ゆうパケットプラス」送料410円で発送致します。

※ゆうパケットプラスによる発送について
 まとめて取引の条件を満たす場合は、標準レンズであれば4本程度を同梱して発送することが可能です。陸送扱いのため発送から配達まで3日前後かかります。配達は手渡しではなく郵便受けへのお届けが基本となりますが、ご不在時の配達で郵便受けに入らない場合は再配達となります。再配達では配達日時の指定が可能です。置き配の設定も可能です。
専用の箱で発送することになっていて,大きさは縦17cm×横24cm×厚さ7cmです。

※まとめて取引について
・詳細は以下のヤフオクヘルプページでご確認ください。この条件を満たす場合はまとめて取引の対応が可能です。ヘルプにも記載されていますが,まとめて取引を行うためにはまとめたい商品をすべて落札後取引を開始する必要があります。
・まとめて取引は最大72時間以内の落札物に適用されますが,同一日以外のオークションでまとめて取引をご希望なさる場合は取引メッセージ欄からその旨をお伝えください。こちらからその可否についてご連絡をいたします。最初にご落札いただいた商品の取引開始前でもメッセージ欄から連絡を取り合うことは可能です。

ヤフオク!ヘルプ~まとめて取引とは



★ヘリコイドラッピングの概要と効果★
  出品中の個体に施しているヘリコイドの研磨は、現在、フォクトレンダーやツアイスなどの高級なマニュアルフォーカスレンズを国内生産しているCOSINAが自社のハイエンド交換レンズのすべてに施しているラッピング(Lapping)を参考にした方法で行っています。これまで、商品説明中の【分解整備の内容】でヘリコイドの研磨剤による研磨とだけ記述していましたが、この方法が耳慣れないものだったせいかヘリコイドの研磨や研磨後の経年劣化に対する不安からと思われるご質問をこれまで複数いただきました。そこで、新たに項目を起こしてこれらの不安を解消するための情報提供をすることにいたしました。詳しくはこの後に説明しますが、ヘリコイドラッピングにはヘリコイド部分の経年劣化をおさえる効果があります。

【研磨剤によるヘリコイドの研磨の概要】
●COSINAのヘリコイドラッピング
 ラッピングとは研磨方法の1つで、ラッピング研磨またはラップ研磨とよばれるものです。COSINAで行われているヘリコイドラッピングについては自社のHP上で一般に公開されていて、以下をクリックすると見ることができます。



●出品するレンズに使用しているラップ剤
 COSINAのHP上で、ラップ剤(研磨剤)についてはその画像のみが紹介されていて、調合内容については公開されていません。そこで、ラップ研磨をネット検索してみると複数の専門企業が関連情報を公開していました。そこで、ラップ研磨の特徴や方法、そして、ラップ剤の種類とそれぞれのラップ剤が対応する研磨対象等について調べてみました。その結果をもとにヘリコイド研磨に使用するラップ剤をいろいろなパターンで準備し、試行錯誤を繰り返しました。その結果、十分に実用的なラップ剤を得ることができ現在に至っています。試行錯誤の過程では主に以下のの2項目について点検しました。
(1)研磨後の溝の表面の状態を拡大して観察し、ヘリコイド内に汚れ・こびりつき・傷によるめくれ上がり(バリ)などが除去されていること
(2)ヘリコイドにグリスを塗布して組み立て、実際に回転させた時にざらつき・トルクむら・反転時の遊びなどが指先に違和感として伝わってこないか

●選択したラップ剤とその性質
 ラップ研磨に使用されているラップ剤には酸化アルミニウム・炭化ケイ素(カーボランダム)・ダイアモンドスラリーの3種が紹介されていました。私はこの中から最も硬度が低く金属から樹脂まで対応する酸化アルミニウムを選択しました。見た目は白色の微粒子です。酸化アルミニウムはアルミニウム製のヘリコイド部品の表面に自然形成される酸化被膜と同じ物質です。そのため、アルミニウムの面を削り取る力は弱く、ヘリコイドに付着した汚れや、アルミニウムの表面にできた傷によるめくれ上がりなどを選択的・効率的に除去することができます。もしもアルミニウムの表面層を削り取る必要がある場合は、より硬度が高い炭化ケイ素を使用すると作業が効率的に進むはずです。

●実際のラップ研磨の進め方
 COSINAのHPに記述された方法と同様です。ヘリコイドの溝全体にラップ剤を塗布してヘリコイドを回転させ、回転を何回か往復させていくとざらつきなどの違和感が減少し、明らかに回転がスムーズになっていくことが指先で実感できます。そのうちに手ごたえの変化がなくなりますのでその時点で研磨を終了しています。次に洗浄作業を行いラップ剤をきれいに洗い流します。
 乾燥後は溝の状態をルーペで確認し、除去可能な残留物がある場合は、再度軽く研磨を行います。こうすることで必要以上に研磨をし過ぎないようにしています。以下のリンク先に私が行ったラップ研磨で残留物が除去されていく過程を記録した拡大画像を置きました。


 この比較画像はヘリコイドグリスが固化して回転させることもままならない状態だったヘリコイドの部分の整備状況を撮影した画像の部分拡大です。最終的に④ではヘリコイドの底部がきれいになっていることがわかります。
画像1 未処理(固化したグリスがこびりついた状態)
画像2 歯ブラシを使用した洗浄後(溝の底に固化したグリスが多く残っている状態)
画像3 1回目のラップ研磨後(固化したグリスがおおむね取れた状態)
画像4 2回目のラップ研磨後(残っていた付着物が取れて研磨が完了した状態)
 この比較画像を見るとラップ研磨の効果がよくわかると思います。研磨の完了後は狭い溝の底面まで異物を取り除くことができていて、底面が平滑な状態になっていることが確認できます。

●ラップ研磨後の洗浄
 ラップ研磨が終了した後の洗浄は大変重要です。COSINAでラップ研磨を担当する部門の方にオールドレンズにラップ研磨を行う場合のことについて問い合わせてみました。その回答によると、COSINAでは専用の洗浄液を準備して複数の超音波洗浄機に順番に通して洗浄していくそうです。また、個人のレベルでラップ研磨を行う場合は歯ブラシを使用して中性洗剤で洗浄する方法でも問題はないそうです。ただし、水洗を十分に行い乾燥時には自然乾燥ではなくエアブローで水を吹き飛ばすことが重要とのことでした。その理由は、ラップ剤に含まれる砥粒がヘリコイド内に残ると新しいグリスを充填した後も研磨が進む可能性があるからだそうです。

●ラップ研磨のメリット
 ※精密研磨加工の株式会社ティ・ディ・シー(TDC)のHPから抜粋
 ~ラップ研磨・ラッピング研磨のメリットとしては、細かい研磨剤を用いて小さな力で除去するので、加工対象物にストレスを与えず、所望の精度を実現することができます。平滑面が求められるものにもマッチしています。加工熱による歪みもあまり発生しない加工方法と言えます。平滑面を作ることは、部品としては高精度組立を実現したり、光学特性の向上、摩擦特性の管理、防錆等の観点からも有効と言えます。~
 私が行っているラップ研磨でもヘリコイド鏡筒を重ねて擦り合わせる際には、回転させているだけで無理に力を加えて擦り合わせるようなことはしていません。ラップ剤がグリスの代わりにヘリコイドの溝内部に充填され、ヘリコイドを回転させるとヘリコイドの溝の間で研磨剤の粒子が浮遊して動き回りながら異物を削り取っていくような感覚です。

●ヘリコイドのかみ合わせを利用したラップ研磨
 ラップ研磨を行う場合は研磨したい物体と形状がピッタリ重なり合う面と擦り合わせる必要があります。例えば凸レンズの表面を研磨する場合はその面と曲率が逆になった凹面の部材が必要になります。ヘリコイドの場合は組み合わせるヘリコイドが互いの溝の形状を補う形状で精密に作られていますので、組み合わせるヘリコイド鏡筒どうしでラップ研磨を行うことでこびりついた汚れを等を効果的に除去することができます。
 このヘリコイドの工作精度について調べていたところ、『精密機械』という書籍の記事として「精密工作法の実施例 写真機工業(1)」に掲載されていたものに詳細な説明が出ていました。カメラレンズの鏡筒ヘリコイドの製造時に使用するネジ切装置が5タイプが表にまとめられていて、それらのネジ切り精度は7μm~から20μmとなっていました。 これらの装置で刻まれたヘリコイドの溝は、グリスが入り込む空間ができるようにヘリコイド間で一定の間隔ができるように設計されています。この間隔は端から端まで高い精度で刻まれていて、外部から力を加えることで溝の中の向かい合ういずれかの面同士は互いに接触させることができるようになています。そのため、グリスを塗布する前にヘリコイド鏡筒をねじ込んだ状態で前後方向や横方向に押し引きすると少し動くことが確認できます。(2つのヘリコイド鏡筒を最後までねじ込んだ後、前後に引っ張った時と押し込んだ時の長さの差を電子ノギスで測定したところ0.2㎜でした)また、ヘリコイドの溝の底面も凸部と凹部の表面同士も接触できるようになっています。そうしないとヘリコイドの溝同士が互いにくさびを打ち込むような状態になり、最悪の場合は動かなくなくなるはずです。もしも、ヘリコイドの溝に「異物が入り込む」、「こびりついた汚れがある」、「ヘリコイド自体に削れなどの凹凸ができる」などの原因で、許容範囲を超える大きさのものがどこか1か所でもあると、ヘリコイドの回転時にその部分の引っ掛かり感触として手に伝わってきます。


【金属の腐食について】
 金属の腐食という言葉には、(1)金属の表面が酸化するすること、(2)金属の材質が劣化して当初の形状を保てなくなることのどちらも含まれます。カメラレンズのを使用する通常の場面で(1)は起きていますが(2)が起きる可能性はほとんどないようです。
●アルミニウムの腐食
 アルミニウムの腐食についてはネット検索すると多くの情報が得られますが、要点をまとめると以下のとおりです。
1 アルミニウムの表面には酸化アルミニウムの被膜が形成され、この皮膜は(2)の腐食に対する耐性が強く、屋内環境では極めて安定しています。酸化被膜が傷などで剥げてもすぐに再形成されます。
2 酸・アルカリなどに対してpH4~pH8 の領域では不動態化した酸化皮膜が形成されているため、実用上良好な耐食性を有しています。
3 屋外で長時間放置した場合は白サビが発生します。これは雨水に含まれる塩分などの影響で酸化被膜が劣化し、空気や水に含まれる水素や酸素と結合し、白い水酸化アルミニウムが形成されたことによるものです。
4 屋外に放置されたアルミニウムの表面に銅や真鍮などの異種金属と接触している面があると、雨水などが接触面に入り込み異種金属接触腐食が発生しアルミニウム側が腐食します。
・塩化物イオンによって発生する局部腐食
 3・4は酸化被膜が消失することで発生しますが、これらの腐食は局部腐食とよばれるものです。そして、その発生の原因は塩化物イオンとされています。局部腐食は何らかの原因でできたアルミニウムの表面の穴や隙間などに塩化物イオンが蓄積される場合に発生します。例えばアルミニウムの表面に傷が付き、その中に塩分を含む雨水などが繰り返し入り込むことがあると、乾燥するたびに溝の奥に塩化物イオンのもとになる塩分が個体として蓄積されます。それがまた濡れると塩分が電離して塩化物イオンの濃度が上昇していきます。こうなると腐食がさらに進み傷が深くなる。そして、その溝の中の塩化物イオン濃度がさらに上昇するという悪循環に陥ります。
局部腐食がヘリコイドに発生する可能性は0か?
 カメラレンズを通常使用する環境で局部腐食が発生する可能性はほとんどないと考えられます。もし起きたとしたらそれなりの原因があります。例えば、水没したことがあり(特に海水中)その水の中に含まれている塩分がヘリコイド表面にあるこびりつきの隙間や傷の中に入り込む。あるいは、塩分を含む微細なチリが入り込むこなどのことが繰り返され、塩化物イオンの濃度が上昇する現象が考えられます。
 いずれにしても、局部腐食が始まるきっかけは酸化被膜が破壊されたあと、塩化物イオンの作用で生成された水酸化物イオンとアルミニウムが結びつき水酸化アルミニウムが生成されてしまうことです。このことから考えてもラップ研磨により傷による凹凸を軽減し、溝の内部にたまっている異物などを除去することは有効です。局部腐食の発生原因から考えて正常な状態で入手したレンズに局部腐食が発生する可能性はかなり低いと思われます。

●銅の腐食
 ヘリコイドに使用される銅や真鍮(銅と亜鉛の合金)なども表面の酸化物を除去するとすぐに酸化が始まり酸化被膜が形成されます。真鍮は銅と亜鉛の合金ですが、銅と亜鉛の化合物ではなく混合物です。そのため成分として含まれる銅が酸化被膜を作ります。どちらの金属も酸化により酸化第一銅(赤色)及び酸化第二銅(黒色)へと化学変化が進行し、色が赤から黒っぽい色に変化していきます。この酸化被膜自体はアルミニウムの場合と同様に内部を酸化から保護する働きがあります。そのため、銅もアルミニウムと同様に長期間使用するものの素材として活用されています。
・ヘリコイドの溝が長年腐食しない証拠
 ヘリコイドの溝の部分はグリスが塗布されているため酸化をはじめとする腐食の進行が大幅に遅れます。その証拠として60年以上前に生産されたレンズのヘリコイドでも、グリスを取り除くと金属光沢が残っています。このことと同様に、ラップ研磨後ヘリコイドにグリスを塗布することで良好な状態が長期にわたって保たれます。このようなことからグリスがなくならない限り、また、水没など特殊な事情がない限り、操作感に影響するレベルの腐食が起きる可能性はほとんど考えられません。
・ヘリコイドの溝以外の研磨
 ヘリコイドの溝以外の部分は常に空気と接しているため酸化は進行し赤色から黒色に変化してきます。また、屋外に銅や銅を成分として含む真鍮を長期間置くと、酸素以外に水素・炭素・硫黄などと化合した緑青ができます。この緑青も内部の金属を保護するほか抗菌効果があります。しかし、見た目が悪く、比較的もろいため粉のようなものがはがれてくる場合があます。ヘリコイドの溝などの動作にかかわる部分にできた場合はもちろんですが、その他の部分でも緑青は除去した方が良いと思います。緑青の原因物質の一つである硫黄はグリスに使用される場合がある二硫化モリブデンの分子に含まれています。もしも、この物質が分解されると硫黄ができます。これによる実害があるかどうかは未確認ですが、念のため現在使用しているグリスは二硫化モリブデンを含まない濁りのないタイプにしています。
 また、酸化した部分は平滑性がわずかに損なわれているため、マウント内部にある絞り環の動きに連動して回転するリングなどの部品は接触部分の表面を軽く研磨しておいた方が絞り環を回す際の摩擦抵抗を減少させることができます。おそらく大量生産された部品は研磨仕上げまではしていないのではないかと思います。(真相は未確認)
 動作の際に周囲の部品と摩擦が起きない部品の表面は研磨をしてもしなくても操作感には関係がありません。しかし、表面についた油分を含む汚れのこびりつきなどをラップ剤で短時間研磨をするだけで生産時の表面色に近づけることができます。酸化被膜は比較的簡単に色がとれるため厚さはかなり薄いようですが、研磨後は速やかに再度酸化が進行し、新品時からたどっててきた色の変化を数十年かけて繰り返していくはずです。


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