本交配Crazy Horseはかつてペンシルベニア州で営業されていたペン・バレー・オーキッド社のW.W.ウィルソン博士によって作出され1966年にRHS登録されたもの。交配名はアメリカの先住民族であるスー族の戦士に由来する。
初回交配はWinston Churchill 'Redoubtable' FCC/AOS× Hellas 'Westonbirt'FCC/RHSという正4倍体の名交配親同士の掛け合わせで、'Penn Valley' AM/AOSや'Feburary' FCC/AOSが生まれた。
本出品個体 'Understatement'はカリフォルニア州で営業されていたオーキッド・ゾーン社のテリー・ルート氏が試みたシブリング実生から選抜された伝説的な名交配親。
花容はドーサルに紫色のスモークを帯びる赤茶褐色の大輪花。花形における咲きムラが少なく、開花後日数が経過しても花弁の乱れが少なく画像1のような花形を保つ。やや立葉でしなやかな株姿で花茎を長く伸ばすさまには凛としていて気品を感じさせる。
本出品個体'Understatement'はテリー・ルート氏が整型花中での最も好む個体の一つであり、交配親として多用された。
本出品個体の交配能力を世に知らしめたのはCrazy Jollyの登場であろう。黄緑色系整型花のJolly Green Gem'New Year'を花粉親として掛け合わせたもので、GM/JOGAやFCC/JOSを含む数多くの高得点入賞花が続出して大いに話題を呼んだ。その後、本個体 'Understatement'を母体にJolly Green Gem 'Perky'を花粉親として用いた再交配したCrazy Jollyの未開花株もオーキッド・ゾーン社から発売され、選抜個体も輸入されている。
Crazy Jollyは東京オーキット・ナーセリーの高橋昌美氏によって交配親として注目され、Crazy Lake、Crazy Star、Crazy Shell、Emerald Crazy等の次世代が作出されている。
また、テリー・ルート氏は本交配を用いてMoring Dew (×Gege Hughes)、Doctor Pei H. Tsau (× Emerald Lake)等のアンバー系整型花以外にもGhost Ryder (×Jack Tonkin )、Knight’s Charger (×White Knight)、Wild and Crazy (×California Dream)等のピンク系整型花を作出している。
私は本個体'Understatement'は交配親としての能力の余地を残しているように思えてならない。アンバーやピンク系は勿論のこと、赤色やレインボー系整型花等の様々な使途が考えられるであろう。
オーキッド・ゾーン社のテリー・ルート氏が自ら選抜・命名して溺愛した本個体'Understatement'の価値は今後も揺るがないであろう。