暑い夏を前にヘヴィな8ビートは、あまり聴きたくないなと思っていたら、爽やかなボサ・ノヴァが届いた。映画『2001年宇宙の旅』のサントラで知られるエウミール・デオダートをプロデューサーに迎えて、NYで録音された最新アルバムは、小野自身初のフランス語の歌唱となったフランシス・レイでお馴染みの「A MAN AND WOMAN」から始まり、60~80年代ポップスの名曲中心の選曲。サウンドは、シンプルなボサ・ノヴァに徹しながらも、都会的な小気味のよいリズム隊と上品なアレンジで、大人のクールなグルーヴ感を漂わせている。小野のヴォーカルは、それぞれの楽曲の持つメロディの良さと言葉の響きの美しさを生かしながら、そよ風が吹き抜けてゆくような心地よさ。この音作りとヴォーカルには、名曲たちへのリスペクトがさりげなく込められているようだ。フランク・シナトラの「ALL THE WAY」、トニー・ベネットの定番「I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO」の少しウェットな雰囲気もいい感じ。 (鈴木勝生) --- 2000年07月号