廃盤
4CD
ピエール・モントゥー
コンサート・ホール・ソサエティ・ボックス
ベートーヴェン:
・交響曲第2番ニ長調 OP.36(1959年)
・交響曲第4番変ロ長調 OP.60 (1959年)
ベルリオーズ:
・幻想交響曲(1964年)
ワーグナー:
・『さまよえるオランダ人』序曲
・『トリスタンとイゾルデ』前奏曲と愛の死
モーツァルト:
・交響曲第35番『ハフナー』 K. 385(1964年)
・交響曲第39番 K. 543(1964年)
チャイコフスキー:
・幻想序曲『ロメオとジュリエット』、
ほかロシア音楽
ピエール・モントゥー指揮
ハンブルク北ドイツ放送交響楽団
ラヴェルと同じ年に生まれたフランスの巨匠、ピエール・モントゥー(1875~1963)が非常に長生きをしてステレオ時代に数々の名盤を残してくれたことは、歴史的音源を愛好する者にとってブルーノ・ワルターのステレオ録音同様、たいへん有難いことだと思います。ワルターが専らアメリカ・コロンビア(現ソニー・クラシカル)にステレオ録音を残したのに対し、万事縛られることを嫌ったモントゥー(晩年にロンドン交響楽団の音楽監督就任を断ったことは有名)は、アメリカRCA、アメリカWestminster、イギリスDecca、オランダPhilipsなどに録音。それぞれ全てのステレオ録音がCD化され、現在にまで彼の至芸が聴き継がれているわけです。
しかし、もう1つ、スイス・ジュネーヴに本拠地があった世界的な通信販売会社、コンサートホール・レーベルへの彼のステレオ録音がレコード会社の解散という事情も手伝って、まとまって聴くことが出来ない状況にあったことは非常に残念なことでした。今回、シューリヒト、ミュンシュのアンソロジーに続いてモントゥーのコンサートホール録音が聴けるようになったことは、この巨匠の晩年の芸術を語る上で意義あることと思います。
アルバムを順に追ってゆきますと、まず、モーツァルトの交響曲第35番《ハフナー》と第39番の組み合わせが注目です。モントゥーはモーツァルトをたいへん得意としたにもかかわらず、録音は極めて少なく、この2曲はともに彼の唯一の録音に当たるからです。果たして演奏も素晴らしいもので、第35番冒頭からモントゥーらしい輝かしい生命力と弾力的なリズムに満ちた進行に心弾むのを覚えます。各楽器のメロディーの受け渡しはまったく名人芸のきわみで、オーケストラの音色が魔術のように移り変わってゆきます。早めのテンポを基調としながら、ちょっとしたアゴーギグやデュナーミクの変化が味わい深い表情を生んでいます。第3楽章終結でのとぼけたような味などモントゥーならではと言えるでしょう。そして超快速のフィナーレがやってきます。こんなに天馬行くような颯爽たるフィナーレはちょっと聴くことが出来ないでしょう。第39番もほぼ同傾向の素晴らしい演奏です。
このモーツァルトを聴いて気が付くのは、EMIの名エンジニア・イアン・ジョーンズ氏の素晴らしいリマスタリング技術です。古いLPをご記憶の方は、中音域が過剰で音がダンゴ状態になっていたのを思い出されることでしょう。とくに日本のコンサートホール盤はプレス技術やレコードの材質が今一歩で歪みにも悩まされたことと思います。
しかし、今回のCDはイアン・ジョーンズ氏の腕で面目一新。左右、奥行き、音の高低、ダイナミック・レンジとも実にバランスが良くなり、いままでダンゴだった各パートの絡み合いがしっかりと見通せるようになりました。筆者自身、実はこの演奏がこれほど素晴らしかったとは、このCDを聴くまで気付いていなかったのです。しかし、粋人はいるもので、LP時代からこの演奏を高く評価している評論家もいました。CL批評界の大御所、吉田秀和氏です。吉田氏は「一枚のレコード」(中公文庫刊)でこのLPに関する素晴らしいエッセイを発表されています。ご興味のある方は一読をお勧めします。
続くベートーヴェンの第2&4は、イギリスDeccaにロンドン響との名盤を残していますが、この北ドイツ放送響盤はオーケストラの持ち味や録音の取り方もあって、もっと男性的で野趣に満ちた表情をもっています。これまた、LP時代とは雲泥の差の聴きやすい音質に改善されております。
ベルリオーズの幻想交響曲は、同曲を得意としたモントゥーの最後の録音に当たるものです。もう1種のステレオがウィーン・フィルを相手にしたもので(イギリスDecca)、録音の優秀さはあるものの、演奏はかなりウィーンの優美様式に傾いたものなので、この北ドイツ盤はモントゥー解釈を生地のまま味わえる価値があります。この一枚はフランス・ディスク大賞を獲得したことでも知られています。
最後はワーグナーの序曲、前奏曲集です。これまたモントゥーの数少ないワーグナー録音ということで復活が待ち望まれた録音です。ぶっきら棒なほど淡々と進めながら、雄大なスケールと凄まじい迫力を感じさせ、さすが大家の棒と思わせます。また、ロシア音楽の名曲集もモーツァルトとこのワーグナーの余白に入っており、これまた充実しきった演奏を楽しむことができます。
残念ながら1曲、チャイコフスキーの第5交響曲のみオリジナル・テープが発見できず、入れることが出来なかったのですが、このセットがモントゥー最晩年の心境を味わう上でかけがえの無い価値を誇ることは疑いの無いことと思います。
Disc 1
ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 OP.36(1959年)
ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 OP.60 (1959年)
Disc 2
ベルリオーズ:幻想交響曲(1964年)
ボロディン:『イーゴリ公』~「だったん人の踊り」
Disc 3
ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲
ワーグナー:『トリスタンとイゾルデ』前奏曲と愛の死
R=コルサコフ:スペイン奇想曲(1964年)
ムソルグスキー:禿山の一夜(1964年)
Disc 4
モーツァルト:交響曲第35番『ハフナー』 K. 385(1964年)
モーツァルト:交響曲第39番 K. 543(1964年)
チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』(1964年)
ピエール・モントゥー指揮
ハンブルク北ドイツ放送交響楽団
コンディション良好。
※ボックスには、スレが見られます。
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