同時期のJL-B41の姉妹機で41の廉価版のように見られていますが、本機にはなぜかエディカレントACサーボモーター
41にはDCサーボモーターが使われていました(JL-B41Ⅱではなぜか本機と同じACサーボモーターが使われました)。
実は以前出品した上級機のJL-B61R(TT-61)も同じACモーター、制御回路を使っています。
メイン基板も同じ物なので中身は上級機と同じ物と言えるでしょう。
41や44では松下製のDCモーターでしたが、本機のACモーターはビクター製のオリジナルと思われます。
このACモーター採用が本機の大きな特徴ではないでしょうか。
DCモーターを使ったJL-B41のモーターをこちらのACモーターに載せ替えてしまったマニアの方も居られるほどです。
実はオークションでも人気でしばしばとても高額になるマイクロ DD-5などはこのビクターのACモーターを使っています。
確かにDD-5はよくできたプレーヤーですがこちらの方がオリジナルなのにいまいち人気がありませんね。
私はここがちょっと納得できません。周囲に流されず内容を見極めましょう。
MICROのDD-5やDD-7などは現在でも非常に人気が高いのですが、使われているモーターは実は本機のモーターと同じビクター製です。
MICROはこのモーターを特に気に入っていたようで本家のビクターより多くの機種に採用していたのではないでしょうか。
本機はMICRODD-5などのオリジナルの原器ともいえます。しかし回転性能は優秀なのです。
現在でもDCモーターよりもコギングの発生しないACモーターの方が良いとされる方も多く居られるようですが、現在ではほぼ絶滅状態のようです。
かつてDENONはACモーターに拘り続けていましたが、だいぶ以前からやめてしまい、現在ではDCモーターですね。
トルクではどうしてもDCモーターに負けてしまうということでしょうか。
トルクは大きい方が良いとはいえ、無制限に大きければ良いわけではなくプラッターの重量とのバランスが需要です。
プラッターの重量も単純に重ければ良いというわけでもなく、重いほど鳴きも止めにくくなってしまいます。
重量級プレーヤーでなければどうしても出せない音というのはありますが
本機のようなエントリークラスのプレーヤーでもバランスよく設計すればかなり良い音は出せるのではないでしょうか。
もう1つ、このACモーターの良い点は故障しにくい事です。多くの同型機や同じモーターを使った機種を扱いましたが本当に壊れた物には出会いません。
調整が必要な事はあってもそれだけで済んでしまいます。こういった古い製品では故障しないという事は最大のメリットと言えるでしょう。
44や77などのシリーズは積層ブナ材を使っていますが、31や41のシリーズ機はパーティクルボードにプリントシートを貼った仕上げです。
簡素化はされましたが綺麗に仕上がるのでその後の人気機種QL-5や7などのシリーズ機はこちらになりました。
このプリントシートの良さは汚れてもクリーニングで驚くほど綺麗になる事ですね。
本機は複数台入手したうちの、動作に問題なく程度の良いものを簡単にクリーニング、メンテナンスしたものです。
入手してチェックしてみますと内部の埃や全体の傷の少なさから使用感が少なく、とても程度の良い物でした。
年式からすると傷はとても少なく化粧シートの剥がれも殆どありません。
プラッターやアームなど金属部の錆、腐食も少なくさらコンパウンドや金属磨きクロスなどで磨いてピカピカです。
ヒンジ部なども磨いてとても綺麗です。ネジ類など取り外せる物は外して1本1本磨いています。
もちろんキャビネットなど本体も特殊なクリーニングワックスで磨いて本当に綺麗です。
入手時カートリッジは付属していませんでした。
そこで即決で購入された方には手持ちのSONY製XL-15と純正シェルをお付けします。
当時のSONYの定番カートリッジなので安価でもとても良い音を再生します。癖が無く明るく元気ですね。
調べると多くの方がレビューしています。やはりプレーヤーに付属させていたカートリッジにハズレは無いようです。
ただしこのカートリッジの針はダンパーが劣化している物が多いようですがこのカートリッジでは特に問題はありません。
使用時間は分かりませんが現状問題なくとても良い音を再生しています。
軸受けは古い油をふき取り、新たに超潤滑性のオイルを注油しています。
ビクター機などでよく問題になる電源部のケミコンを止めるボンドははみ出してパーツを腐食させる事がわかっているのでチェックしました。
ケミコンは一度取り外して容量、ESR値をチェック、基板のボンドは取り去って付け直しました。
スイッチ類と回転調整ボリュームは信頼できる接点復活剤を複数使い分けて使用、接触不良はなくとてもスムーズに調整できます。
タバコのヤニで茶色く汚れる事の多いプレーヤーですが、本機はとても綺麗でした。さらに全体を特殊なワックスなどでクリーニングしました。
ダストカバーもコンパウンドで軽く磨きクリーニングワックスで仕上げたのでとてもクリアーでかなり綺麗かと思います。
前側に少しキズがありその他にも細かいキズ、スレなどはありますが、全体的にとても綺麗な美品といえるのではないでしょうか。
ビクター機のダストカバーは本機あたりまでは劣化しにくいアクリル製だったようです。汚れても磨けば驚くほどクリアーで綺麗になります。
その後の製品は光線などで黄ばんだり曇ったりするようになってしまいました。材質が変わったのでしょう。
この機種はクリーニングでとても綺麗になりますが、本機は初めからとても綺麗でした。
木部の劣化が見られる同型機も多いのですが本機では劣化は少なく僅かに角部に開きがありますが軽く補修しました。
添付の画像をよくご覧になってご検討ください。写真は下手で申し訳ありませんが多めにupしておきました。
トーンアームは軸部をクリーニングしてトレースは問題なく感度良好。アームリフターもグリスを交換してゆっくりスムーズに降下します。
アームはいちど取り外して丁寧に整備しました。使いやすいダイヤル式のアンチスケーティングも問題ありません。
ただしアームレストのロック部品がありません。この部品は取れやすく、よく無くなった機体があります。
はじめから付いていないプレーヤーも多く使用には特に問題は無いでしょう。
その他、回転も安定してストロボスコープも33回転、45回転も問題なく止まり回転調整もスムーズにできます。
アームやプラッター、ツマミ類など金属部はコンパウンドや金属磨きクロスで磨いてピカピカです。
プラッターのストロボ部も面倒ですが磨いてワックスをかけてあるので特にくっきりと鮮明に表示します。
ゴムシートはクリーニングして保護剤をかけました。ただし僅かに凸部があります。使用には特に問題ありません。
劣化しやすい脚のインシュレーターのゴムも特に問題なくこちらも保護剤をかけました。
電源コードにキズがあり補修しました。使用には特に問題はありません。
付属品はゴムシートとEPアダプター、アース線になります。アース線は使いやすく末端処理して端子を付けました。
EPアダプターは本機純正付属品ではありませんがビクター純正の新しい物です。
画像にはレコードが写っていますがテスト用ですので付属しません。
また、取扱説明書のコピーをお付けします。不鮮明なところはあるかと思いますがご了承ください。
さらに即決で購入された方には上述のSONY製XL-15カートリッジ(SONY純正シェルつき)をお付けします。
はじめてレコードプレーヤーをお使いになる方はアームのバランスのとり方や針圧の掛け方、アームの高さの合わせ方
カートリッジの取り付け方など一般的なプレーヤーの使い方をよくお調べになってからお使いください。
よくプレーヤーで問題になるのはカートリッジの取り付けによる接触不良とアームやリフターの高さ調整ですね。
レコードプレーヤーは本機のように丁寧に作られていれば、まず良い音がします。その中ではアームがいちばん音に影響するかもしれません。
アームは単品販売はされなかったようですが、基本性能は高いと思います。
QL-7などに搭載されたUA-7045系のアームは連結部のゴムがヘタってウェイト下がりになるのですが
こちらのTH方式はわざとウェイトを下げてトレース能力を高めています。連結部のゴムがヘタることは無いようです。
丁寧に磨き上げてとても美しい工芸品のようです。当時のアームは本当に手間をかけて作られていました。
本機の良さはなんといってもそのシンプルさ故の故障の少なさです。同じACモーターを使った機種を含めてこれは特筆もの。
こういった古いプレーヤーでは大変重要ですね。
実は本機はトランスレスです。コスト的にも有利ですがトランスが無いプレーヤーは振動やノイズの点でも有利です。
レコードプレーヤーはマニュアル機よりオート機の方が人気のようですが、オート機は故障のリスクも高くなります。
シンプルなマニュアル機は音の点でもずっと有利ですね。寝落ちを心配される方はテクニカなどの後付けのオートリフトアップを使いましょう。
ビクターはもともと日本ビクター蓄音器といったくらいでレコードプレーヤーの専門会社だったんですね。
この機種の頃には松下製のモーターを採用したり、上級機種JL-B77には自社開発の最高レベル(現在でもこれを超えるのはあるのか?)のモーターを開発したり
本機のように一時期ACモーターを開発採用したり
またDCモーターを開発採用しその後のメインモーターとして自社機はもちろんヤマハやマイクロなどにOEM供給する事になるようです。
先行した松下にならって短期間に試行錯誤した後に各社に多数供給できるモーターを開発したのだと思います。
短期間にこれだけ多くのモーター採用の機種があるのはプレーヤー専門会社としての意地があったんでしょう。
この機種はクォーツロックになる前の機種ですので回転が安定しないのではとお気になさる方も居られるかと思いますが
私が多数のプレーヤーを使ったところでは全く問題ないと確信します。
クォーツロックでないと音が変化するとかクォーツの方が音が良いとかはありません。クォーツなら調整がいらないというだけです。
ストロボが安定して止まらないと気にされる方も居られるかと思いますが
ストロボは電源の50Hzまたは60Hzの明滅を利用しているので目安にすぎません。
実際には電源周波数はその地域の電力使用量によっては微妙に変化するのです。
発電所はその変化をできるだけ少なくする努力はしていますがクォーツ並みにする事はできません。
DCサーボモーターですからプラッターの回転数は電源周波数には影響されません。周波数で変化するのはストロボの明滅周期です。
この変化を回転の変化ととらえて頻繁に回転調整をすればボリュームが痛んでしまいます。
レコードプレーヤーはオーディオ製品の中では特に繊細でその取り扱いには熟練が必要かと思います。
私は今でもレコードを聴くことがメインで多くのプレーヤーを使用してきました。
やはりオーディオマニアでしたらレコードを聴きましょう。
メカ部分がほとんどのアナログレコードプレーヤーはオーディオ機器の中では本当に特別な物と思います。