*S6【スイス一流商社より】星屑の連環(ステラ・カテナ) 18KWG Necklace ITALY New 長さ43cm 重さ36.5g 幅12.0mm

*S6【スイス一流商社より】星屑の連環(ステラ・カテナ) 18KWG Necklace ITALY New 長さ43cm 重さ36.5g 幅12.0mm 收藏

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### 星屑の連環(ステラ・カテナ) #### 序章:沈黙の遺産 水野澪(みお)の指先が、ビロードの古びた内張りに触れた瞬間、真冬の窓から差し込む陽光がふっと陰ったような気がした。祖母、靜(しずか)が亡くなって三ヶ月。季節は巡り、寒々しい部屋には、まだ持ち主の不在を嘆くかのような静寂が満ちていた。遺品整理は、思い出という名の棘を一つひとつ抜き去るような、痛みを伴う作業だった。 桐箪笥の最も深い引き出しの、さらに奥。着物の間に隠されるようにして置かれていた小さな木箱。蓋を開けると、そこに鎮座していたのは一本のネックレスだった。 それは、澪がこれまで見たどんなジュエリーとも異なっていた。円環が、いくつも、いくつも連なっている。ただの輪ではない。それぞれの円環には、ダイヤモンドのように精緻なファセット(切子面)が放射状に刻まれ、まるで凍てついた星屑をそのまま繋ぎ合わせたかのようだ。素材は18金ホワイトゴールドだろうか、冷たく、それでいてどこか有機的な温かみを感じさせる不思議な輝きを放っていた。重厚感のあるそれは、長さ43センチ、重さ36.5グラムと、手に取るとずしりとした存在感を主張した。幅12ミリの円環が連なる様は、古代の王族が身に着ける装飾品のようでもあり、未来の機械都市の設計図のようでもあった。 「……こんなもの、持ってたんだ」 澪の呟きは、埃の舞う部屋に吸い込まれて消えた。祖母は質素な人だった。澪が知る限り、このような華やかな装身具を身に着けている姿は一度も見たことがない。なぜ、こんなにも美しいものを、誰にも見せず、ひっそりと隠し持っていたのだろう。 澪は28歳。ジュエリーデザイナーとして都内の工房で働いているが、ここ一年ほどは深刻なスランプに陥っていた。師でもある工房のオーナーからは、こう言われ続けている。 「君のデザインは、技術的には完璧だ。美しいし、洗練されている。だが、魂が感じられない。心に突き刺さるような、物語がないんだ」 物語。その言葉が、鉛のように澪の心にのしかかる。物語とは、経験であり、記憶であり、愛や憎しみといった生の感情の結晶だ。両親を早くに亡くし、この祖母に育てられた澪の人生は、波風の少ない、穏やかなものだった。大きな悲しみも、燃え上がるような喜びも、彼女の人生には欠けているように思えた。だから、デザインが表層的になるのも仕方がないのかもしれない。 ネックレスをそっと箱から取り出す。ひんやりとした金属の感触が、肌に馴染んだ。留め具には極小の文字で「ITALY」と刻印されている。イタリア製。祖母とイタリア。その二つが、澪の頭の中で全く結びつかなかった。 祖母との最後の会話を思い出す。それは亡くなる一週間前のことだった。次のコンペのデザインに行き詰まっていた澪は、珍しく祖母に弱音を吐いた。 「私、何を作りたいのか、わからなくなっちゃった」 靜は、編み物をする手を止め、皺の刻まれた優しい目で澪を見つめた。 「澪。形あるものは、いつか朽ちる。でもね、想いは残るのよ。時を超えて、人の心に。あなただけの物語を、紡ぎなさい」 その時の澪には、その言葉が月並みな慰めにしか聞こえなかった。 「物語なんて、私にはないよ」 ぶっきらぼうに返してしまった自分を、今では深く後悔している。あれが、最後の会話になるなんて、思いもしなかった。祖母は何も言わず、ただ少し寂しそうに微笑んで、また編み物に戻った。あの時、祖母は何を伝えたかったのだろう。 澪は、吸い寄せられるようにネックレスを自分の首にかけた。ずしりとした重みが、鎖骨の窪みに収まる。鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようだった。ネックレスが放つ圧倒的な存在感に、澪自身が負けている。 その時だった。 ネックレスの円環の一つが、窓から差し込む西日を受けて、カッと閃光を放った。目も眩むような光。同時に、澪の脳裏に、全く知らない風景が洪水のように流れ込んできた。石畳の道。乾いた土とオリーブの香り。けたたましいサイレンの音。そして、愛しい人の名前を叫ぶ、若い女性の悲痛な声――。 「うっ……!」 激しい眩暈に襲われ、澪はその場に崩れ落ちた。手にしたネックレスが、まるで脈打つ心臓のように、熱を帯びていくのを感じる。これは、ただの金属の塊ではない。祖母が隠していたのは、単なる美しい装飾品ではなく、封印された誰かの記憶、そして、時を超えて語り継がれるべき、一つの壮大な物語そのものだったのだ。意識が急速に薄れていく中で、澪は確信した。このネックレスは、自分をどこかへ導こうとしている。祖母が語らなかった、過去の、その先へと。 #### 第一章:フィレンツェの空、1944年 意識が浮上した時、澪の耳に飛び込んできたのは、馴染みのない言語の喧騒と、遠くで鳴り響く教会の鐘の音だった。硬い石畳の感触が背中に伝わる。ゆっくりと目を開けると、視界に広がっていたのは、くすんだ煉瓦色の建物が密集する、古いヨーロッパの街並みだった。 「……どこ、ここ?」 混乱する頭で身を起こす。自分の服装は、現代の東京で着ていたシンプルなニットとジーンズのまま。しかし、周囲の風景は明らかに異質だった。道行く人々は古風な服装で、街角には馬車が停まっている。建物の壁には、読めない文字で書かれたポスターが貼られ、そのいくつかは無残に引き裂かれていた。 突如、空気を切り裂くように甲高いサイレンが鳴り響いた。人々が悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように走り出す。 「Bombardamento!(空襲だ!)」 「Scappate!(逃げろ!)」 意味は分からなかったが、その緊迫した響きだけで、命の危険が迫っていることを肌で感じ取った。何が何だか分からないまま、澪も人の流れに逆らわないように走り出す。どこへ向かえばいいのかも分からず、ただ恐怖に突き動かされる。 その時、強い力で腕を引かれた。 「Vieni qui, presto!(こっちへ、早く!)」 振り返ると、オリーブ色の瞳をした若い女性が、必死の形相で澪を見つめていた。年の頃は澪と同じくらいだろうか。栗色の髪を無造服にまとめ、麻のブラウスとロングスカートという出で立ちだ。彼女は澪の手を掴むと、脇の細い路地へとぐいぐい引っ張っていく。 やがて二人は、小さな工房のような建物の分厚い木製の扉の中に転がり込んだ。扉が閉められると、外の喧騒が少しだけ遠のく。工房の中は、様々な金属加工の道具や、作りかけの装飾品で埋め尽くされていた。土と金属とオイルが混じり合った、独特の匂いが鼻をつく。 「Stai bene?(大丈夫?)」 女性は、荒い息を整えながら澪に問いかけた。澪は、言葉が分からないながらも、必死に頷く。 「あ、ありがとう……ございます」 日本語で返すと、女性は不思議そうに首を傾げた。その時、澪は彼女の首元に輝くものを見て、息を呑んだ。 祖母の遺したネックレス。それと酷似した円環の連なりが、彼女の首にかかっていた。しかし、よく見ると少し違う。澪のものが完成された円環の連続であるのに対し、彼女のものは、まだいくつかのパーツが繋ぎ合わされただけの、未完成の状態に見えた。 「そのネックレス……」 澪が思わず指差すと、女性は愛おしそうにそれに触れた。 「Questo? un regalo. Dal mio fidanzato.(これ?恋人からの贈り物なの)」 誇らしげに微笑む彼女の笑顔は、戦時下とは思えないほど明るく、生命力に満ちていた。 工房の奥から、一人の青年が現れた。年の頃は二十代半ば。黒髪に彫りの深い顔立ち、そして何より、その指先が印象的だった。長く、節くれだっているが、しなやかで力強い。彫金師の手だ、と澪は直感した。 「Elena, chi lei?(エレーナ、彼女は誰だ?)」 青年は、見慣れない服装の澪を訝しげに見つめる。 「Non lo so, Leonardo. L'ho trovata per strada. Sembrava persa.(分からないわ、レオナルド。道で見つけたの。迷子みたいだった)」 エレーナと呼ばれた女性が答える。 レオナルドと名乗った青年は、澪の前に立つと、少し躊躇しながら、辿々しい英語で話しかけてきた。 「You... understand English?」 「Yes! I do!(はい、分かります!)」 澪は、救われた思いで大きく頷いた。レオナルドは安堵の表情を浮かべ、エレーナに事情を説明した。 彼らの話から、澪は自分が置かれている状況を理解した。ここは1944年のイタリア、フィレンツェ。第二次世界大戦の末期、街はドイツ軍の占領下にあり、連合国軍による空爆の脅威に晒されていた。エレーナとレオナルドは恋人同士で、この工房はレオナルドのものだった。彼は、フィレンツェでも指折りの腕を持つ彫金師なのだという。 「なぜ、君のような格好の人間がこんな場所に?」 レオナルドの問いに、澪は答えることができなかった。タイムスリップしてきた、などと信じてもらえるはずがない。 「道に迷って……記憶が、少し混乱しているんです」 そう言うのが精一杯だった。レオナルドとエレーナは顔を見合わせ、何かを察したようにそれ以上は追及しなかった。戦争は、人々の日常も記憶も、容赦なく破壊する。澪もまた、その犠牲者の一人だと思われたのだろう。 空襲警報が鳴り止むまでの間、澪は工房の隅で息を潜めていた。外からは、時折、爆撃機のものと思われる重低音が響いてくる。その度にエレーナは小さく身を震わせ、レオナルドがその肩を優しく抱き寄せた。 不安と恐怖の中で、澪の目は自然とレオナルドの手元に引き寄せられた。彼は作業台に戻ると、小さなヤスリを手に取り、一つの円環に一心不乱にファセットを刻み始めたのだ。 シャッ、シャッ、というリズミカルな音だけが、工房に響く。その表情は真剣そのもの。まるで神聖な儀式を執り行っているかのようだった。 「それは、彼女のネックレスのパーツですか?」 澪は、恐る恐る英語で尋ねた。レオナルドは顔を上げず、作業を続けながら答える。 「ああ。俺たちの……未来の約束だ」 その声には、深い愛情がこもっていた。 「このデザインは、どうやって思いついたんですか?」 ジュエリーデザイナーとしての好奇心が、恐怖を上回った。澪の問いに、レオナルドは初めて手を止め、顔を上げた。 「円環は、永遠の象徴だ。始まりも終わりもない。俺とエレーナの愛が、永遠に続くように、と。そして、このファセットは、星の光をイメージしている」 彼は、窓の外の、爆撃機が飛び交う不穏な空を見上げた。 「どんな暗い夜でも、星は必ず輝いている。この戦争が終わって、平和な世界が来た時、俺たちの未来が、たくさんの星の光で満たされるように。そんな祈りを、一刻み、一刻み、ここに閉じ込めているんだ」 その言葉は、澪の心を強く揺さぶった。 魂。物語。 師に言われ続けてきた、自分に欠けているもの。その正体が、今、目の前にあった。レオナルドは、ただ美しい装飾品を作っているのではない。彼は、愛する人への想い、未来への祈り、平和への渇望、そのすべてを、この小さな金属の輪に刻み込んでいるのだ。技術だけではない。デザインの奇抜さだけでもない。作り手の魂が、その作品に永遠の命を吹き込む。 「ただの飾りじゃない。これは俺たちの『時の円環(テンパス・アンヌルス)』なんだ。たとえ俺たちの身に何が起きても、この円環が、俺たちの愛と時間を繋いでくれる」 しばらくして、空襲が終わったことを告げるサイレンが鳴った。レオナルドとエレーナは、澪に食料と水を分け与え、安全な避難所まで送ろうとしてくれた。その時、工房の扉が乱暴に開けられ、制服を着た男たちが数人、土足で踏み込んできた。彼らがレオナルドに突き付けたのは、一枚の紙切れだった。 召集令状。 エレーナの顔から血の気が引いた。レオナルドは、覚悟していたかのように静かにそれを受け取った。 「Leonardo, no! Non puoi andare!(レオナルド、だめ!行かないで!)」 エレーナが泣き叫びながら彼にすがりつく。 「Elena, amore mio...(エレーナ、私の愛しい人…)」 レオナルドは、彼女を強く抱きしめ、未完成のネックレスのパーツを、そっと彼女の手に握らせた。 「これを完成させて、必ず君の元へ帰る。約束だ。だから、待っていてくれ」 「嫌!約束なんていらない!あなたと一緒にいたいの!」 引き離され、連行されていくレオナルド。エレーナの悲痛な叫びが、石畳の路地にこだまする。澪は、なすすべもなく、その光景をただ見つめていることしかできなかった。これが、戦争。これが、愛する者たちが引き裂かれるということ。 エレーナが、崩れ落ちるようにその場に泣き崩れた。彼女の手の中で、未完成の円環が、夕陽を受けて悲しく光る。 その光が、再び澪の目を射抜いた。 強い光。激しい浮遊感。 澪は、エレーナの絶望の叫びを背中に聞きながら、再び時空の渦に飲み込まれていった。自分の首にかけられたネックレスが、まるで共鳴するかのように、熱く、そして重く感じられた。 #### 第二章:港町の異邦人、1955年 次に澪が意識を取り戻した時、鼻をついたのは潮の香りと、魚のはらわたの生臭い匂いだった。目の前には、活気に満ちた漁港が広がっている。木造の漁船が何艘も停泊し、法被姿の男たちが威勢のいい声を張り上げながら網を引いていた。 空は青く澄み渡り、フィレンツェの鉛色の空とは対照的だった。時代は、少し進んでいるようだ。人々の服装や、走っているオート三輪から、おそらく戦後の日本だろうと推測できた。 澪は、波止場の隅に腰を下ろし、混乱した頭を整理しようとした。レオナルドとエレーナ。あの二人はどうなったのだろう。レオナルドは無事に帰ってこられたのだろうか。あのネックレスは、完成したのだろうか。答えの出ない問いが、胸を締め付けた。 ふと、視線の先に、防波堤に一人で座っている少女の姿が映った。年は10歳くらいだろうか。黒いおかっぱ頭に、少し古びたワンピース。他の子供たちが鬼ごっこをして駆け回っているのを、寂しそうな目で見つめている。その横顔に、どこか見覚えがあるような気がした。 その時、数人の腕白そうな少年たちが、少女を取り囲んだ。 「おい、静子!また一人かよ」 「お前の母ちゃん、ガイジンなんだってな!」 「目が青いのか?髪は赤いのか?」 少年たちは、囃し立てるように少女をからかう。少女は、唇を固く結び、俯いたまま何も言い返さない。その瞳に、じわりと涙が滲んだ。 静子。その名前に、澪の心臓がどきりと跳ねた。まさか。祖母の幼名は、静子だったはずだ。 「やめなさい!」 澪は、思わず立ち上がって叫んでいた。少年たちは、突然現れた見慣れない女性に驚き、一瞬たじろいだが、やがて舌を出すと、散り散りに逃げていった。 残された少女、静子に、澪はゆっくりと近づいた。 「……大丈夫?」 静子は、警戒した目で澪を睨みつけると、ぷいと横を向いてしまった。その頑なな態度が、誰にも心を開こうとしない、孤独な魂を物語っていた。 「あなた、日本人じゃないでしょう」 静子は、ぽつりと言った。その言葉は、澪ではなく、自分自身に向けられているようにも聞こえた。 「どうして?」 「匂いが違うもの。それに、私を見る目が、みんなと違う」 鋭い感受性を持った子供だった。澪は、何と答えればいいのか分からなかった。 その時、「シズコ!」と、凛とした女性の声が響いた。 声のした方へ振り向くと、そこに立っていたのは、紛れもない、あのエレーナだった。 しかし、フィレンツェで会った時よりも、彼女は少し年を重ね、その表情には異国での暮らしの疲れと、消えない哀しみの影が差していた。服装も、質素なモンペ姿に変わっている。それでも、彼女の持つ気品と美しさは、少しも損なわれてはいなかった。 「お母さん……」 静子が呟く。エレーナは、澪の姿を認めると、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに静子の方へ歩み寄った。 「こんなところに一人でいたら危ないでしょう。さあ、帰りましょう」 エレーナは、流暢な日本語を話していた。その手には、買い物かごが提げられている。 静子は、無言で母の後に続こうとする。その二人の後ろ姿を見ながら、澪はすべてを理解した。 レオナルドは、帰ってこなかったのだ。 エレーナは、おそらく幼い静子を連れて、戦後の混乱したイタリアから逃れ、日本人と再婚してこの国へ渡ってきたのだろう。そして、この港町で、異邦人として、静かな、しかし決して平坦ではない暮らしを送っているのだ。 澪は、いてもたってもいられず、二人の後を追った。彼女たちが暮らしているのは、港を見下ろす高台に立つ、小さな文化住宅だった。家の前まで来ると、エレーナが澪に気づき、振り返った。 「先ほどは、娘を助けてくださって、ありがとうございました」 彼女は深々と頭を下げた。その丁寧な物腰の中に、他人を寄せ付けない壁のようなものを感じた。 「いえ……」 澪が何かを言いかけると、エレーナはそれを遮るように言った。 「もしよろしければ、お茶でもいかがですか。お礼をさせてください」 家に招き入れられると、そこは質素ながらも、イタリアの香りがする小物で彩られていた。壁にはフィレンツェの風景が描かれた絵皿。テーブルクロスは、鮮やかな手刺繍が施されている。この家は、エレーナにとっての、失われた故郷そのものなのだろう。 お茶を淹れるエレーナの横顔を、澪は盗み見た。彼女の首には、あのネックレスがかけられていた。それは、見事に完成していた。連なる円環は、寸分の狂いもなく繋がり、一つ一つのファセットが、部屋の明かりを受けて繊細な光を放っている。レオナルドの魂が、そこに宿っているかのようだった。 「素敵なネックレスですね」 澪が言うと、エレーナの表情が、ふっと曇った。 「……主人からの、贈り物なんです」 彼女はそう言ったが、その「主人」がレオナルドを指すことは明らかだった。 「でも、今の私には、少し華やかすぎるかしら」 彼女は、自嘲するように微笑んだ。その笑顔は、ひどく痛々しかった。ネックレスを見る彼女の目は、愛おしみと同時に、どうしようもない悲しみを湛えている。それは、幸せな過去の象徴であると同時に、決して取り戻すことのできない喪失の証でもあった。 隣の部屋で、静子の気配がする。彼女は、きっとこのネックレスを「不幸の象徴」のように感じているに違いない。母がこれを見るたびに悲しい顔をするのだから。母を悲しませる、キラキラした忌ましいもの。だから、あんなにも心を閉ざしているのだ。物静かで、感情をあまり表に出さなかった祖母。その原点が、ここにあった。イタリア人の母と日本人の継父。周囲からの好奇の目と、母の抱える癒えない悲しみ。そのすべてを、幼い静子は一人で受け止めようとしていたのだ。 数日後、澪は再び、一人で防波堤に座る静子を見つけた。澪が隣に座っても、彼女は何も言わなかった。 「……人形、なくしたの?」 澪がふと見ると、静子のワンピースのポケットが、何かを探すように不自然に膨らんでいた。静子は、びくりと肩を震わせ、それから、堰を切ったようにぽろぽろと涙をこぼし始めた。 「……お父さんが、作ってくれた……人形……」 それは、おそらく日本人の継父のことだろう。 「どこでなくしたか、覚えてる?」 静子は、しゃくりあげながら、小さく首を横に振った。 澪は、静子の手を取り、一緒に人形を探し始めた。市場の通り、神社の境内、子供たちが遊ぶ空き地。夕暮れが迫る頃、二人は、神社の裏にある古井戸のそばで、泥だらけになった小さな布の人形を見つけた。 「あった!」 静子は、人形を拾い上げ、ぎゅっと胸に抱きしめた。その顔には、久しぶりに見る、子供らしい屈託のない笑顔が浮かんでいた。 帰り道、静子は初めて自分から口を開いた。 「お母さんね、あのキラキラしたのを見ると、いつも泣きそうな顔をするの」 やはり、そうだったのだ。 「だから、私、あれ、嫌い」 「……あれはね」と、澪は言いかけた。あれは、あなたのお母さんが、どれだけ深く愛されていたかの証なんだよ。あなたという存在が、どれほどの希望と祈りの中で生まれたかの証なんだよ。 しかし、その言葉は喉の奥でつかえ、音にはならなかった。未来から来た自分が、過去に干渉してはいけない。それに、今の静子に、その言葉の本当の意味は理解できないだろう。 澪は、ただ、静子の小さな手を強く握りしめた。 「静子ちゃんは、お母さんが大好きなんだね」 そう言うと、静子はこっくりと頷き、澪の手を握り返してきた。その小さな手の温もりが、澪の心にじんわりと沁みた。 物静かだった祖母。あまり過去を語らなかった祖母。その胸の内に、こんなにも深い孤独と、母への健気な愛情が秘められていたことを、澪は初めて知った。 その夜、澪はエレーナの家で夕食をご馳走になった。日本の食卓に並ぶ、少しだけイタリア風にアレンジされた素朴な料理。静子の継父である日本人男性も帰宅していた。彼は、口数の少ない、実直そうな男だった。エレーナと静子を、不器用ながらも大切に思っているのが伝わってきた。 食事が終わり、静子が眠りについた後、澪はエレーナと二人きりになった。 「あなたは、一体、誰なのですか?」 エレーナが、静かに問いかけた。そのオリーブ色の瞳が、まっすぐに澪を見据えている。 「あなたの目を見ていると、遠い昔の、懐かしい誰かを思い出すのです」 澪は答えることができなかった。自分は、あなたの曾孫なのだと、どうして言えるだろう。 エレーナは、それ以上何も聞かず、窓の外の暗い海を見つめた。 「あの日……彼が連れていかれた日、あなたも、あの工房にいましたね」 澪は、息を呑んだ。エレーナは、覚えていたのだ。 「幻だったのかと思っていました。でも、あなたはここにいる。まるで、時が運んできた幽霊のように」 彼女は、首のネックレスにそっと触れた。 「これは、彼が完成させてくれたものではありません。戦後、彼の工房に残っていたパーツと設計図を見つけ、彼の弟子だった人が、想いを汲んで完成させてくれたのです。彼の……形見です」 その声は、静かだったが、底知れない悲しみに満ちていた。 「私は、この鎖に縛られているのかもしれない。美しい過去という名の、牢獄に」 その時だった。彼女が触れたネックレスの円環が、月明かりを反射して、強く、強く輝いた。 まただ。あの光。 澪の身体が、ふっと軽くなる。エレーナの驚いたような顔が、遠ざかっていく。 「おばあちゃん……」 澪は、幼い祖母の幸せを、そしてエレーナの魂の救済を祈りながら、三度目の時の旅へと身を投じた。 #### 第三章:解き放たれる心、1975年 次に澪が降り立ったのは、活気と喧騒に満ちた高度経済成長期の日本の、とある郊外の住宅地だった。家々の庭には色とりどりの花が咲き、子供たちの笑い声が響いている。平和で、満ち足りた時代の空気が、肌で感じられた。 澪は、一軒の家の前に立っていた。表札には「水野」と書かれている。自分の苗字。そして、この家には見覚えがあった。自分が幼い頃、祖父母と暮らした家そのものだった。 ガラス戸の向こうに、若い女性の姿が見える。洗い物をしているのだろうか、背中を向けている。その人物が誰であるか、澪にはすぐに分かった。 大人になった、祖母の靜だ。 年の頃は三十代前半だろうか。幼い頃の面影を残しながらも、落ち着いた物腰の、美しい女性に成長していた。 澪は、自分の身体が半透明になっていることに気づいた。今回は、実体を持っていない。まるで幽霊のように、誰にも姿を認識されることなく、家の壁をすり抜けて中に入ることができた。 家の中は、澪の記憶にあるよりもずっと新しく、生活の匂いに満ちていた。ちゃぶ台の上には、飲みかけの麦茶。壁には、幼い女の子が描いたと思われる家族の絵が飾られている。その絵の中の女の子は、おそらく澪の母だろう。 台所にいた靜は、ため息をつくと、居間の隅にある鏡台の前に座った。そして、一番下の引き出しから、小さな宝石箱を取り出した。中に入っていたのは、あのネックレスだった。 彼女は、ネックレスを手に取り、じっと見つめている。その表情は、複雑だった。悲しみでも、喜びでもない。まるで、扱いに困る重荷を眺めるような、そんな表情。 この頃には、エレーナは既に亡くなっているのだろう。ネックレスは、母の形見として靜が受け継いだのだ。しかし、彼女はそれを一度も身に着けることなく、こうして宝石箱の奥深くにしまい込んでいる。 そこへ、背広姿の男性が帰ってきた。澪の祖父だ。 「ただいま」 「……お帰りなさい」 靜の返事は、どこか棘を含んでいた。二人の間に、冷たい空気が流れる。 「また、それを見ていたのか」 祖父は、靜の手の中のネックレスに目をやり、不機嫌そうに言った。 「お義母さんの形見なのは分かるが、いつまで過去に囚われているんだ。俺たちには、今の生活があるだろう」 「あなたには分からないわ!」 靜が、珍しく声を荒らげた。 「この鎖が、どれだけ重いものか!これは、私を過去に縛り付けるだけ。母も、きっとそうだった。幸せだったイタリアでの思い出と、帰らぬ人を待ち続ける悲しみに、ずっと縛られていたのよ!」 幼い頃に感じた、母の癒えない悲しみ。異邦人として生きた孤独。それらの記憶が、大人になった靜の心を未だに苛んでいるのだ。彼女にとって、このネックレスは、輝かしい愛の結晶ではなく、母と自分を不幸にした呪いの鎖のように感じられているのかもしれない。 「私は、あの子……美咲(みさき)には、私のような思いをさせたくない。過去に縛られず、この日本で、自由に生きていってほしいの」 美咲とは、澪の母の名前だ。靜は、娘を想うがゆえに、自らのルーツである過去を、このネックレスと共に封印しようとしているのだ。 祖父は、何も言えずに部屋を出て行った。一人残された靜は、ネックレスを握りしめ、静かに涙を流していた。その姿は、かつて防波堤で一人きりだった、孤独な少女の姿と重なった。 違う。おばあちゃん、それは違うよ。 澪は、心の中で叫んだ。そのネックレスは、呪いなんかじゃない。あなたを縛る鎖なんかじゃない。それは、時を超えてあなたを守り、未来へと繋いでいくための、希望の光なんだ。レオナルドが、エレーナが、そしてあなたのお母さんが、どれほどの愛を込めて、その輝きを未来に託したか。 声は、屆かない。姿も、見えない。 でも、想いだけでも届けたい。 澪は、泣いている靜のそばに寄り添い、彼女の肩にそっと手を置いた。もちろん、その手は空を切るだけだ。しかし、澪は全身全霊で念じた。伝われ、この想い。レオナルドの祈り。エレーナの愛。時を超えて、今、ここに。 その瞬間、奇跡が起きた。 靜が握りしめていたネックレスが、ふわりと柔らかな光を放ち始めたのだ。それは、これまで澪が見てきた閃光とは違う、温かく、慈愛に満ちた光だった。 光の中から、いくつもの幻影が浮かび上がっては消えていった。 フィレンツェの工房で、愛する人のためにファセットを刻む、真剣なレオナルドの横顔。 「これは俺たちの時の円環だ」と、誇らしげに語る彼の声。 爆撃の轟音の中、レオナルドの胸に顔をうずめるエレーナの姿。 召集令状を手に、悲しい別れをする二人。 戦後の港町で、幼い靜を強く抱きしめるエレーナ。その瞳には、悲しみだけでなく、娘を守り抜こうとする母の強い決意が宿っていた。 それらの幻影は、まるで走馬灯のように、靜の脳裏に流れ込んでいった。それは、彼女が知らなかった、母の記憶。そして、会ったこともない、本当の祖父の記憶。 ネックレスに込められていたのは、悲しみだけではなかった。そこには、どんな困難にも負けない、燃え上がるような愛と、未来の世代へと託された、力強い希望が満ちていた。 「ああ……お母さん……」 靜は、初めて母の本当の心を理解した。エレーナは、過去に縛られていたのではない。レオナルドとの愛の記憶を胸に抱き、それを生きる力に変えて、異国で必死に娘を育て上げたのだ。このネックレスは、その力の源泉だったのだ。 涙が、靜の頬を伝う。しかし、それはもはや、悲しみや孤独の涙ではなかった。浄化と、感謝の涙だった。 彼女は、おもむろに立ち上がると、鏡の前に座り、震える手で、生まれて初めて、そのネックレスを自分の首にかけた。 ひんやりとした金属の感触。ずしりとした重み。 それはもはや、彼女を縛る呪いの鎖ではなかった。過去から受け継いだ、愛と魂の重み。自分を守り、導いてくれる、温かいお守り。 鏡に映る自分の姿を見て、靜は、ふっと微笑んだ。 その顔は、澪がずっと知っている、優しくて、穏やかで、そして芯の強い、大好きな祖母の顔そのものだった。 その笑顔を見届けた瞬間、澪の意識は、再び柔らかな光に包まれた。ありがとう、おばあちゃん。これで、やっと分かったよ。あなたが、このネックレスを、そしてあなた自身の物語を、どれだけ大切に思っていたか。 #### 終章:未来へ繋ぐ円環 光の渦が晴れた時、澪は、祖母の家の、埃っぽい畳の上に座っていた。窓から差し込む光は、先ほどまでと同じ、令和の冬の西日だ。まるで長い夢を見ていたかのような感覚。しかし、それは決して夢ではなかった。 手のひらの中には、あのネックレスが静かに横たわっている。その輝きは、以前よりも一層深く、温かみを増しているように見えた。肌に触れると、ひんやりとした感触の中に、確かに、レオナルドの情熱と、エレーナの愛と、そして祖母・靜の優しさが感じられるようだった。 澪の頬を、一筋の涙が伝った。 それは、後悔の涙ではなかった。祖母を理解できなかった自分を責める涙でもない。自分のルーツを知り、時を超えた家族の愛に触れることができた、感謝と感動の涙だった。 祖母は、このネックレスに込められた物語を、いつか澪に話すつもりだったのかもしれない。しかし、内気で過去を語るのが苦手だった祖母は、その機会を逸してしまった。だから、ネックレス自身が、その記憶を伝えるために、澪を時空の旅へと導いたのだ。 「あなただけの物語を、紡ぎなさい」 祖母の最後の言葉が、今ならはっきりと理解できる。私だけの物語とは、私一人の人生のことではなかった。私へと至る、この壮大な家族の愛の物語そのものを指していたのだ。そして、それを未来へと紡いでいくことこそが、私の使命なのだと。 スランプに陥っていたデザインの靄が、完全に晴れていくのを感じた。作りたいものが、伝えたい想いが、泉のように湧き出てくる。 テーマは「Stelle a Catena(星屑の連環)」。 過去から未来へと受け継がれる、愛の記憶。戦火の中で生まれた祈り、異国で育まれた母子の絆、そして、悲しみを乗り越えて得た真の強さ。そのすべてを、デザインに落とし込もう。 一週間後、コンペの最終プレゼンテーションの日が来た。 澪は、黒いシンプルなドレスの上に、祖母から受け継いだ、あのネックレスを身に着けていた。ずしりとした重みが、彼女に勇気と自信を与えてくれる。それはもはや、彼女の身体の一部であり、魂そのものだった。 スポットライトが当たるステージに立ち、澪は、審査員たちをまっすぐに見つめた。 「私が本日、皆様にご提案するジュエリーのテーマは、『継承される想い』です」 澪は、自分がデザインしたネックレスの設計図をスクリーンに映し出した。それは、いくつもの円環が連なるデザインだったが、それぞれの円環は、古びたアンティーク調のものから、モダンで洗練されたものへと、少しずつ形を変えながら繋がっていた。過去、現在、そして未来へと続く、時の流れを表現していた。 「このデザインは、私の曾祖父にあたる、一人のイタリア人彫金師が遺したネックレスから着想を得ました」 澪は、自分の首元に輝くネックレスに、そっと触れた。 「このネックレスは、第二次世界大戦の最中、フィレンツェの小さな工房で生まれました。そこには、愛する人の無事を祈り、平和な未来を願う、一人の男の魂が込められています。その想いは、戦争を生き延びた私の曾祖母へ、そして、異国の地で孤独に耐えた私の祖母へと、受け継がれていきました」 澪の言葉は、もはや単なるプレゼンテーションではなかった。それは、彼女自身の魂の告白であり、時を超えた家族への賛歌だった。彼女は、レオナルドとエレーナの物語を、幼い靜の葛藤を、そして、すべての想いを受け止めて優しさへと昇華させた祖母の人生を、情感豊かに語った。 「ジュエリーとは、単なる装飾品ではありません。それは、人の想いを記憶し、時を超えて伝えるための、小さなタイムカプセルなのだと、私は信じています。私のデザインは、このネックレスが教えてくれた、愛の物語へのオマージュです。そして、このジュエリーを身に着けるすべての人が、自らのルーツに誇りを持ち、未来へと希望を繋いでいけるように、という祈りを込めました」 語り終えた時、会場は水を打ったように静まり返っていた。やがて、一人の審査員が立ち上がり、拍手を送った。それを皮切りに、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。多くの審査員の目には、涙が光っていた。 結果は、満場一致での最優秀賞受賞だった。 数ヶ月後、澪は、工房から独立し、自身の小さなブランドを立ち上げる準備をしていた。ブランド名は、イタリア語で「時の円環」を意味する「Tempus Annulus」。 アトリエの窓からは、春の柔らかな陽光が差し込んでいる。澪の首元では、あのネックレスが、まるで誇らしげに、そして優しく輝いていた。 それはもはや、単なる18金ホワイトゴールドの塊ではない。 レオナルドの祈り、エレーナの愛、靜の優しさ、そして澪自身の感謝と決意。幾世代にもわたる魂が宿り、時を超えて輝き続ける、家族の物語そのものだった。 「おばあちゃん、おじいちゃん。エレーナさん、レオナルドさん。見ていてください」 澪は、窓の外に広がる青空に向かって、静かに語りかけた。 「私は、この愛を、未来へ繋いでいきます。私だけの、新しい物語を、ここから紡いでいきます」 その誓いの言葉は、春の風に乗り、時空を超えて、愛する者たちの魂へと届いていく。首元の円環が、その誓いに応えるように、キラリと、一際強く輝いた。始まりも終わりもない、永遠に続く愛の連鎖を、祝福するかのように。
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