縦:約50mm
横:約38mm
作者:ラファエレ・ペルニーチェ
QR:アーティスティッククオリティ
日本にカメオが紹介された当初から高い人気を誇る職人であるペルニーチェ兄弟、その弟がラファエレ・ペルニーチェ氏です。
かつて兄弟で共同の名義を使っていた頃より作られてきたペルニーチェスタイルとも呼ばれる清廉な雰囲気の漂う女性の横顔をモチーフとしたカメオは、モダンカメオの代名詞的存在としてよく知られるところとなりました。
共同名義のころよりどちらが作った作品なのかは察しが付く細かな違いがありましたが、アニエロ氏と工房を分けて独立してからは独自の作風をさらに進歩させ、比較的シンプルで上品な感じのあるアニエロ氏作に対して、装飾が多く華やかな感じのある作品を発表して人気を博しております。
中でも”La Torre”のサインのあるものはラファエレ氏自身が傑作と認めたものに入れられる特殊銘であり、価格はルースでも20万円を切ることは無いというカメオ全体においても最高級の品となります。
近年はバブル期から2000年代初頭頃まで続いていた日本のカメオブームもひとまず落ち着いて久しく、この間に現地作者たちも日本の宝飾業界からの注文にとらわれず自分の作りたいものを作るという流れができており、なかでもオーソドックスな人物カメオを彫っていた作者たちには、19世紀のカメオをモデルにしたアンティークリバイバルのカメオを積極的に彫る流れが来ています。
そこで今回は近年ラファエレ氏が制作しているアンティークリバイバルの新作カメオ。
モチーフはイエス・キリスト、19世紀のよく知られたキリスト像のカメオがもととなっており、該当作品は当ギャラリーでも2点取り扱いがありますが、そのうちの1点はコルネリアンの外周材三層彫りで、本作の直接のオリジナルとなっております。(オリジナルは既にお譲り済、もう1点はサルドニクスで現在出品中の「磔刑」)
ラファエレ氏のアンティークリバイバルは私もご本人との個人的な取引で多く購入しておりますが、ラファエレ氏の特色を残したままアンティーク系のモチーフを取り入れた他作と違って、本作はモデルとなったキリスト像を良く意識していて、サインを見なければラファエレ氏作だとはわからないほど。
こうした古典的な作風でのリバイバルはどちらかといえばアニエロ・ペルニーチェ氏の作風に近く、私も自分で買い付けてなければぱっと見はアニエロ氏の作だと思うことでしょう。
母材も三層彫りに向いた外唇部ではなく、オリジナル同様に色分けが難しい外周部を用いておりますが、茨の冠の色分けは完璧。
ただ上層の色が混じっているだけではなく、明確に意図的な色配置でなければ三層彫りとみなさない当ギャリーの基準でも文句なしの三層彫りで、茨の冠だけに色を残して、像は全て淡黄色で統一されており、地色の非常に濃い朱色とのコントラストも美しい仕上がりとなっております。
ちなみにオリジナルは左向きですが、これはコルネリアン外周部材のカメオとしては異例であり、当時のキリスト教関連のカメオにしばしば見られた、あえて後頭部にコントラストを持ってくることを優先した構図。
一方本作が右向きなのは顔の輪郭にコントラストを持ってくるカメオの構図論の原則にのっとった形で、各時代や使用部材、そしてモチーフごとのカメオの様式を見てきた身からすると、時代背景を感じさせるものがあって面白いと思っています。
貝は非常に濃い朱色と淡黄色のコルネリアン。
湾曲の強さといい色の濃さといい、殻口付近の外周部下部から採れる一番材で、この部材の常として0時位置から9時位置にかけてヘアラインが入ります。
それから3時位置に部材の切り出し時にできたと思われる薄ヒビと裏面に層剥離が出ており、層剥離はここから破損に至ったケースは見たことがありませんし表から見て分かるものでもありませんが、一応裏面で大きく目立つため時価に考慮しております。