縦:約51mm
横:約50mm
作者:ジョヴァンニ・アメンドーラ
QR:アーティスティッククオリティ
ジョヴァンニ・アパ工房において制作されましたフランソワ・ブーシェ作の絵画「La cage」をモデルにしたカメオです。
カメオとしての大本はアパ工房にて現代カメオの基礎を教え続けた20世紀の巨匠ジョヴァンニ・ノトによる作があり、より安価な価格帯のものとして同工房の弟子の手により彼の作を手本に模刻したものが出回りましたが、本作はそんな中のひとつ。
年代的には70年代を通して作られたようで、ほぼ80年以降のカメオしか流通していない日本国内でも稀に見かける程度には流通量がある作品ですが、70年代まではカメオの作者がサインを入れる習慣は一部の例外除いて無かったため、サインは無しか、あってもAPAの工房銘のみで作者個人の情報は見つかっておりませんでした。
しかし最近海外にてジョヴァンニ・アメンドーラのサインが入ったものが見つかって一連の「La cage」の模刻を行ったのが同氏であることが分かり、ノトの直弟子のなかで風景物で名を知られるようになったのはジョヴァンニ・アメンドーラただひとりなので(兄のチーロ・アメンドーラもいい作品を彫ったが、彼は人物も風景も両方作った)これを知ったときは「なるほど確かにな…」と思ったものです。
後年日本でカメオブームがあった80年代以降、風景物の作者としてはパスクアーレ・オッタヴィアーノやフェルディナンド・セルペとともに大変人気があっただけあり、若き日のこの時代においてもなかなかの彫りといったところ。
特に貝の厚みを活かした彫刻的表現と貝の色の濃淡を用いた絵画的表現を両立させた様式は20世紀中期に特有の様式であり、後年の風景・絵画物では絵画的表現の方が主流になってあまりみられなくなったものであるため、いかにもこの両立の様式を確立したノトの直系であると感じさせます。
無論手本作となるノトの「La cage」(画像5に参考として掲載)と比べてしまえばはるかに粗削りな作品ではありますが、そこも含めて各時代ごとの様式や作品の時代背景などを知っているとまた見え方が変わってくる、味わい深い作品といえるでしょう。
貝はコーヒー色の地にくっきりとした白色のサルドニクス。
状態はよく、裏面の中央右寄りの位置にヘアラインが数筋あるのみで表から見えるような傷はなし。
表の外周の枠などにも欠落はなく、半世紀前の作品としてはかなり綺麗な状態を保っております。