ジャン＝ジャック・エンネル（1829年3月5日 - 1905年7月23日）はフランスの画家で、ガブリエル＝クリストフ・ゲラン、ミシェル・マルタン・ドロラン、フランソワ＝エドゥアール・ピコに師事し、1858年に『アダムとエヴァ』でローマ賞を受賞した。1889年に芸術アカデミー会員となり、レジオンドヌール勲章は1873年にシュバリエ、1903年にグラントフィシエを受勲した。彼の風景画は初期のコローを思わせ、人物画は肉感的で夢見るような美しさを特徴とし、特に1865年以降は「第二の手法」と呼ばれる、神秘的な夕暮れの中に優美な肉体を浮かび上がらせる女性像で世紀末のパリで高い人気を博した。代表作に『牧歌』『読書の女』がある。

ジャック・エンネル Jean-Jacques Henner 油彩 6号大 19世紀絵画
本作は、19世紀フランスの画家ジャン＝ジャック・エンネル（Jean-Jacques Henner， 1829-1905）による、自然の静けさと女性美を見事に融合させた作品です。画面には、豊かな緑に囲まれた水辺の庭園が広がり、その中に3人の裸婦が穏やかに佇んでいます。左手には赤い布の上に身を横たえる女性、中央には石の台に腰かけて静かに思索にふける女性、そして右手には膝を立てて水面を見つめる女性の姿が描かれています。それぞれの身体はやわらかく光を受け、滑らかな肌の質感とともに、夕暮れ時の静謐な空気が漂っています。

エンネルはアカデミックな伝統を礎に持ちながらも、光と影を巧みに操り、幻想的で夢幻的な表現を得意としました。本作においても、まるで時間が止まったかのような神秘的な雰囲気の中で、女性たちは自然と完全に調和し、観る者の心に深い安らぎをもたらします。黄昏の中に浮かぶ優美な裸婦像は、単なる写実を超えて精神性すら感じさせるものとなっており、エンネルならではの詩的な美意識が凝縮された一作と言えるでしょう。